ブックオフが支払う1億円についての雑感

http://www.asahi.com/culture/update/0401/TKY200803310390.html
実はこのニュースを見るまで21世紀のコミック作家の会のサイトすら見たことがありませんでした。とりあえず設立趣旨やアピール文とか一通り目を通してみて気になったのが具体的な数字が全然無いなと
例えば新刊コミック市場の規模、新古書市場の規模、そしてどれくらいの著作権収入の損失があるのか。もっとも著作権収入関連を出すのは難しいかもしれないですが、それでも説得力を持たせるためにも具体的な数字はあったほうがいいんじゃないのかな


まあそのあたりの数字は個人的にも気になったので1億円を支払うらしいブックオフ2008年3月期 現状の認識と今後の方向性(中間決算説明資料)(pdf)から見てみます。この資料の37Pに2005年の数字ではありますが新刊の書籍市場と新古書(資料ではリユース書籍)の市場の規模が載っています

雑誌を除く新刊の書籍市場が1.2兆円。対して新古書(リユース書籍)の市場は2005年で731億円、そしてブックオフがその市場の60.9%を占めている
そして今後どのくらい新古書の市場規模が伸びるのか?ブックオフは潜在市場規模を新刊書籍市場の約2割、2400億円と考えてるみたいです*1


でおそらく著作権者側としては404 Blog Not Found:ブックオフが著作者に支払うべき金額

新刊書と同じ印税率10%を適用すると、著作者が受け取るべきなのは36億円弱、ということになる。実際のところ、古書の利益率は新刊書より高いので、個人的にはもっととってもいい。いっそのこと新刊書と同額をとってもいいとすら思う。そうすれば著作者は文句のつけようがないだろう。

ぐらい払えということなんでしょうね。たしかに買い取りした本がそのまま売れればいいのでしょうが、2008年3月期 現状の認識と今後の方向性中間決算説明資料)(pdf)と2008年3月期中間決算 中間決算短信(連結)(pdf)にもあるのですが現在ブックオフはかなりの在庫過剰状態で今期はその在庫圧縮(実際バックヤード在庫を26%も削減している)の費用と夏場の売上げ不振で減益予想がされています。というか元々そんなに利益率が高いわけでもないのでブックオフとしてはそんな金払う余裕なんて無いといったところでしょうか


ではなぜ今回1億の金を支払うことにしたのか。ブックオフが「著作物使用料に類するもの」を支払う意図は?:栗原潔のテクノロジー時評Ver2:オルタナティブ・ブログでも述べられていますが法律的にみても別に支払う義務があるわけじゃない。ただ将来的に古書でも著作権料を支払うように法改正される可能性も無いわけじゃない、もしかしたら各著作権団体がそういう動きもしているのかもしれない。そのあたりの情報収集、牽制、抑止。ただ「著作物使用料に類するものを支払いたい」というだけじゃない、さまざまな思惑がこの1億円にはあるんじゃないかと思ったりします

*1:資料へのリンクが切れているので参考までにですが中央三井信託銀行がかつて新古書(コミック限定)の調査レポートを出していて潜在市場規模は新刊書籍市場の約1割と見積もっている