ライブは儲かる?
週刊エコノミストの7月29日号で「音楽がタダになる」と題した音楽業界全般の特集記事の中で「ライブ市場」に関する記事が目にとまりました
CDなどパッケージ市場の販売不振とは対照的に、コンサートを中心としたライブ市場は活況を呈している。ぴあ総合研究所の『エンタテイメント白書2007』によると、06年のライブ・エンタテイメント(実演など)の市場規模は、前年比6.2%増の1518億円となり、6年連続で前年実績を上回った。また観客動員数も同1.7%増の2435万人と5年連続で伸びている
それでライブ市場が伸びている要因としてフジロックフェスティバルのような大型の音楽イベントの盛況をあげている。実際07年度の大型音楽イベントの動員数を見てみると「フジロックフェスティバル」が12万7000人、「サマーソニック」が約20万人、「ロック・イン・ジャパン」が14万7000人とそれぞれ前年実績を上回っており、他のロックフェスティバルも全体的に好調だという。またロックだけじゃなくクラシックでも「ラ・フォル・ジェルネ・オ・ジャポン」が5日間の開催で延べ100万人を突破する観客動員規模になっている
さらに観客動員の増加に加えチケットの価格も上昇しているようでコンサート・ライブチケットの平均単価が00年5,508円から06年には6,231円に上昇している(『エンタテイメント白書2007』)。これは日本だけじゃなくて世界的にもその傾向で全米コンサート協会の調査によると米国だと04年から07年までの3年間で、コンサートチケットの平均単価が59%上がり39ドル70セント(約4,100円)から61ドル45セント(約6,500円)になっている
ではライブ市場がどうして好調なのか?記事では次のように分析している
なぜライブ市場が拡大しているのか。それはパソコンや携帯電話の音楽配信や「iPod」などの携帯音楽プレイヤーの普及などで、音楽がより手軽に楽しめるようになり、ファンにとっては音楽の価値が変化していることが背景にある。録音された音楽コンテンツはネットから安く入手し、その代わり「いま」「ここ」にしかない一度限りの体験や興奮、一体感といった感動体験をライブに求めているのではないか。誰もがいつでも聴けるデジタル音楽には高いお金を払いたくはないが、貴重なライブ・エンターテイメントには、高い価値を見出して相当額を支払うのである。レコードやステレオが高価で、それを聴くこと自体が贅沢だった時代とは、消費者の嗜好は明らかに変わってきている
そして今後音楽配信のさらなる低価格化、または無料化にともない楽曲の価格が下落していくしていく反面ライブのチケット価格はさらに上昇していくのではと予測している
ライブの利益
と記事を読んでいるとライブ市場の未来は明るい感じですが、そこで疑問に思ったのがライブって儲かるのか?利益はどうなのかという点。この特集記事の中でU2やマドンナは一回のワールドツアーで数百億もの利益を上げると書かれているが、まあそういうのは超大物アーティストだけだろうし通常はどのようなものなのか。それをエイベックスの決算資料から見てみます
http://www.avex.co.jp/j_site/tansin/main.html
■平成20年3月期 決算短信(連結)より
※数字は平成20年3月期通期の数字(単位は百万円)
PC事業 | NC事業 | LC事業 | CC事業 | |
---|---|---|---|---|
売上高 | 54,608 | 27,567 | 10,513 | 48,817 |
売上原価 | 44,544 | 17,823 | 9,438 | 24,739 |
売上純利益 | 10,064 | 9,743 | 1,074 | 24,078 |
売上純利益率 | 18.4% | 35.3% | 10.2% | 49.3% |
販売費及び一般管理費 | 9,037 | 6,518 | 806 | 21,236 |
営業利益 | 1,026 | 3,224 | 267 | 2,842 |
営業利益率 | 1.9% | 11,7% | 2.5% | 5.8% |
※それぞれの事業の説明(説明文は株主向け期末報告書より)
・PC(パッケージ・コミュニケーション)事業:音楽・映像コンテンツのパッケージ商品を製造・販売するセグメント
・NC(ネットワーク・コミュニケーション)事業:音楽・映像コンテンツのデジタル配信、会員制サイト「ミュゥモ」やファンクラブの運営、
マーチャダイジングを行うセグメント
・LC(ライブ・コミュニケーション)事業:コンサート、イベント等ライヴ・エンタテイメントの企画・制作を行うセグメント
・CC(コンテンツ・クリエイティヴ)事業:音楽・映像コンテンツの制作。アーティストのマネジメント等を行うセグメント(著作権管理もしている)
目に付くのがNC事業の利益率。着うたフルが原動力なんだけどやっぱり儲かるんですね。それに比べるとライブ事業は売上高も4事業で一番少ないし、利益率も決して良くはない。素人考えでもチケットは売れたとしても会場使用料、設営費、機材の費用、各種人件費といろいろ費用がかかりそうだし一部の例外を除けば通常のライブの利益はそう多くないんだろうなあ