あらためて野球とソフトボールがオリンピックで除外になった理由と復帰するために必要なことを考えてみる

北京オリンピックにて野球とソフトボールが一次リーグや決勝トーナメントの試合をやっていますが、この2競技はご存知の通り次回のロンドンでは除外ということになっています。そして現状は復帰も難しい状況です。そこであらためてどうしてこの2競技が除外になったのか、そして復帰するためにどうすべきかを考えてみたいと思います


野球とソフトボールの除外が決定したのが2005年。そのときどういう理由で除外されたと報道されていたのか
雑 記 帳: ロンドンオリンピックからの野球除外 - livedoor Blog(ブログ)

除外になった理由は、
 五輪は世界最高の舞台と位置づけられているが、野球で最高峰といわれる大リーグのトップ選手は出場していない。またIOC加盟202カ国・地域のうち、野球連盟があるのは110にとどまり、普及度が低い。ドーピング違反率は1.24%と全競技で唯一1%を超え、MLBでも薬物違反が続出した。球場建設にコストがかかり、五輪後の再利用が困難。アテネ五輪で入場券の販売率と視聴率が低かった。あらゆる要因が野球には逆風になった。
という事のようです。

時報道されたいた除外理由はだいたいこんな感じだったと思う。しかしIOCのレポートを見るとまた違った理由が見えてくる

IOCレポートからみる野球の除外理由

IOCのレポートはこちら
http://multimedia.olympic.org/pdf/en_report_953.pdf
そしてこちらの記事にわかりやすくまとまっています
2005年7月その3-2 五輪除外祭り夜の部|プロ野球の視聴率を語るblog

495 名前: 代打名無し@実況は実況板で 2005/07/09(土) 01:43:13 ID:A/yv/gBT0

  IOCのレポートを読んだわけだが、結局削除の原因になったのは主に3つみたいね。
  以下、#http://multimedia.olympic.org/pdf/en_report_953.pdfの110ページから引用

  >More effort could be made to improve the image of the game and
  >public interest and understanding of spectators and
  >viewers outside countries where baseball is already popular.
  >The IBAF has no specific environmental programme or action plans in place.

  まずこれが最大の原因。野球が盛んでない国のお客サンに対してゲームの
  見所をアピールしなければならないのに、IBAFが具体的なプログラムを
  持っていなかった。この点はIBAFの努力不足といわれても仕方ない。
  ぶっちゃけ、NFLの方がヨーロッパへの普及の努力してるものね。

  おそらく、メジャーリーガーが出てこないというのは主要な問題ではない。
  どうせヨーロッパ人は誰一人知らないのだから。オリンピックを盛り上げるための
  努力をIBAFがしようとしないのが問題なんだ。

  >There are no women on the IBAF Executive Committee.

  次にこの点。野球は男のスポーツだからIBAFに執行委員がいなくても
  仕方ないんだけど、今や男女同権の時代。「女が出来ない」というのは
  大いなる減点材料(特に、女性のIOC委員にとって)。新規参入で
  ラグビーが真っ先に落とされたのも「男しか出来ないスポーツ」だからだろうね。

497 名前: 代打名無し@実況は実況板で 2005/07/09(土) 01:43:41 ID:A/yv/gBT0

  >The IBAF has a high reliance on Olympic revenues (56.9%) whilst
  >29% of its income comes from marketing and broadcasting.

  これも無視出来んでしょう。他の競技まで読んでないんだけど、"high reliance"と
  書かれちゃうのは印象悪過ぎ。他にもテレビ放映権を買ってもらえない
  (買ってくれる国が少ない)点も指摘されていて、財政基盤の脆弱さは不安材料と
  なっていたでしょう。1番目の問題点と合わせて、「オリンピック盛り上げる努力
  しないのにオリンピックから金だけもらっていくなんて、IBAFサイテー」と
  なっちゃったんでしょうなぁ。


  後二点は一朝一夕で解決できる問題ではないから仕方ないとして、長船氏とかは
  "specific environmental programme or action plans"を持っていったのだろうか。
  ただ行くだけでは事態は何も変わらないぞ。

このOlympic revenues(オリンピックからの収入依存)が56.9%という数字は全競技で7番目に依存度が高い数字

86 名前: 代打名無し@実況は実況板で 2005/07/09(土) 02:18:51 id:muDCXqZ80

  495さんも書いてるが相当IOCもキレてるねえこれ
  >More effort could be made to improve the image of the game and
  >public interest and understanding of spectators and
  >viewers outside countries where baseball is already popular.
  >The IBAF has no specific environmental programme or action plans in place
  日本とか米国等 すでに野球が有名なとこ以外に対する普及を
  してなかったよね?
  特にcould beがキイテル、改善できるはずなのに(していない)
  2002年だかに指摘したのに まったく改善していないじゃんていう
  痛烈な批判だ
  「普及度の問題」とテレビでは片付けてるてるけど
  そんな他人行儀な話ではなく
  なんで公開競技から正式種目にまでしたのに
  普及させる努力を怠ってきたんだ IBAFはってことだ

もちろんレポートには報道されていたメジャーリーグの選手が出場してないこと、ドーピングの問題、加盟国の少なさ等のことも触れられているんだけど、それ以外にも普及や人気向上に関する努力不足と放映権を買ってくれる国が少ないということも指摘されているというのはIBAFとしたら痛いところでしょう

ソフトボールの除外理由

上記のブログだとソフトボールについては触れられていないのでISF(ソフトボール)の項目に目を通してみたんだけど
(英語が全然ダメな人間なのでそこのところは考慮してください。もし興味のある方は原文も読んでください、レポートの141〜146Pです)

・A low number of Member National Federations took part in the qualifying events for the Athenes 2004 Olympic Games across all countries
・A low number of Member National Federations took part in the last Continental Championships in Africa America and Europe whilist there are no Continental Championships in Oceania
・Low number of hours of television coverage during the Athenes 2004 Olympic Games
・Low number of press articles published during the Athenes 2004 Olympic Games
・The ISF reports a low number of media accreditation requests at the last two World Championships, a fairly low number of countries which bradcast last two World Championships and a very low number of countries which paid for TV right for the last two championships

とにかくlow number言われすぎ。アテネオリンピックの予選参加国、大陸別大会の参加国、アテネオリンピックにおけるテレビでの報道、記事。そして世界戦選手権でテレビ放映権料を払っている国などどれも少ない、もしくはとても少ないと言われてる。また他項だとオリンピックによる収入依存が非常に高い(86.1%。この数字は全競技で一番高い)。放映権収入が非常に少ない(ISFの収入のうち1.7%程度の割合しかない)ことも指摘されている。ただ野球と違いドーピングに関しての問題が一切無いという点が救いか
それでもはっきり言って野球以上にレポートから伝わってくる印象が悪い。除外が決定した当時ソフトボールは野球の巻き添えになったような印象だったんだけど、これじゃソフトボールのほうが除外されて当然という感じすらする

オリンピックに復帰するために

ではオリンピックに復帰するために必要なことや問題を考えてみる

野球とソフトボールの連携

野球とソフトボールは競技としては別なんだけどオリンピックの扱いはペアという形に近い。現在のオリンピックは男女平等の考えから男性だけ女性だけにしかできない、もしくは普及していない競技には厳しくなってきている。陸上で棒高跳びや3000M障害といった種目を女性に開放してきたのもその表れだと思う。そういう点から見ると野球は男子、ソフトボールは女子に普及が偏っているためそれぞれ単独で復帰を目指すのは厳しい、だからこそ両団体の足並みを揃える必要がある

施設

野球場の施設が無駄になるか有効活用されるかはホスト国によって全く異なる。問題になるのは当然野球が盛んではない国がホスト国になった場合。オリンピックでは無いけど実際ドーハアジア大会の野球場なんかはサッカー場に改築されてしまっているし、アテネオリンピックのオリンピック・ベースボール・センターも取り壊しの話があるとか。それこそ野球が盛んな国が建設費を補助するとか、もしくは
2005年7月その3-2 五輪除外祭り夜の部|プロ野球の視聴率を語るblog

672 名前: 495=497 2005/07/09(土) 02:14:08 ID:A/yv/gBT0

  >>512
  うん、駄目駄目。

  >>523
  オリンピックの目的には「世界規模でのスポーツの交流・普及」といった
  要素もあるわけで、オリンピック終了後にギリシャやオーストラリアに
  IBAFから指導員を派遣し、子供たちに野球を教えて「オリンピックで
  作った野球場は大事に使わせてもらっています。野球の普及にとって
  オリンピックは大事なイベントなのです。どうか見捨てないでください」
  と下手に出てればあるいは違っていたのかもしれません。
  まさしく、「事件は現場で起こっているんだ!」なわけで、ロビー活動は
  補助的な役割しか出来ない。今更言っても遅いことですが。

くらいに必死にお願いするとかしないと

放映権

これは普及、人気の問題とも関わってくるけど野球もソフトボールも放映権を買ってくれる国が少ないというのはIOCにとっては無視できない。というのもオリンピックの収入の内約50%が放映権の収入*1のため放映権を買って貰えない競技は収入の減少に繋がりかねない。とはいえ買ってくれる国を増やすためには普及と人気向上が必要なわけで


こう復帰するためにいろいろ考えてみると根本の解決策は普及と人気向上なんだろうなあと考える。そのあたり同じく除外候補になっていたテコンドーや近代五種と比べると普及や人気向上の努力を怠ったと言われてもしょうがないかも。IOCやホスト国へのロビー活動も大切だけど、結局地道な普及活動をしないと仮に復帰したとしてまた同じような事になるんじゃないかと思う

*1:他はスポンサーが約40%、チケットが約8%、ライセンス他が約2%という割合