近代五種は何故オリンピックに残っているのか

もし夏季オリンピックの競技の中で最もマイナーな競技は?と聞かれたら何と答えるでしょうか。おそらく何人かは近代五種と答えるのではないでしょうか。そんな近代五種がなぜオリンピックに残っているのか少し考えてみます
まずこの近代五種はどういう競技なのか
wikipedia:近代五種

近代五種競技 (きんだいごしゅきょうぎ、Modern pentathlon) とは、1人で射撃・フェンシング・水泳・馬術・ランニングの5競技をこなし、順位を決める複合競技のことである。

という競技。そして近代五種の歴史とオリンピックへの正式種目になったのは
wikipedia:近代五種

19世紀ナポレオン時代のフランスで、敵陣をつっきって自軍まで戦果を報告することを命令されたフランスの騎兵将校が、馬で敵陣に乗り込み(馬術)、途中の敵を銃と剣でうち倒し(射撃・フェンシング)、川を泳いで渡り(水泳)、丘を越えて走りぬけた(ランニング)という故事を元に、近代オリンピックの創立者であるクーベルタン男爵が古代ギリシアで行われていた古代五種(レスリング・円盤投やり投走幅跳短距離走)をなぞらえた近代五種として競技化を提案したのが始まりと言われる。1912年の第5回ストックホルムオリンピックにおいて、五輪種目に採用された。

とオリンピックへの正式採用は第5回ストックホルム大会からとオリンピック競技としては長い歴史がある。とはいえwikpediaの記述にもありますがフェンシング、馬術、射撃という練習するのに金がかかったり、国によっては環境が整いにくい競技がある複合競技のため普及がなかなか進まないようで、実際IOCのレポート*1を見ると国際近代五種連合 (UIPM)への加盟国は102ヶ国。これはロンドン大会で削除が決まっている野球(国際野球連盟IBAF)加盟国110ヶ国)、ソフトボール国際ソフトボール連盟 (ISF) 加盟国113ヶ国)より少ない。また競技人口もヨーロッパに偏ってるいるためたびたび削除候補に挙げられている

残っている理由

それでもなんとか残っているのにはそれなりに理由がある

1クーベルタン男爵

この競技はオリンピック創立者クーベルタン男爵の提案により始まったという歴史的に経緯があるためIOCとしても削除にはためらいがあるかと

2コスト

全ての競技が他競技の施設、会場と兼用できるため専用施設等を作る必要が無くコストが安くすむ。最近のオリンピックは開催地の負担を削減しようという傾向にあるためコストがかからないというのは強み

3伝統競技

wikipedia:オリンピック競技

「オリンピック競技大会のプログラムに含まれている競技でこの規則(オリンピック憲章)の基準を満たしてはいないものも、例外的な場合については、オリンピックの伝統のために、大会で継続して実施することができる。」

救済規定であり、実質的な普及度や実施の容易度という点で不利となるフェンシング、近代五種馬術などは伝統的競技としての要素も考慮されている。

とあるように伝統競技としての一面が考慮されている。まああくまで「考慮」でしかないのでしょうか

4チケットが売れる

意外かもしれないですが近代五種という競技はチケットが売れる競技だったりします。といってもシドニーアテネと2大会合わせて販売枚数が約41,500枚なので販売枚数自体は少ないのですがチケット完売率が97.4%と非常に高い。現代オリンピックの収入は放映権料とスポンサー収入がほとんどでチケット収入はたいしたことはないのですがそれでも収入源の一つには違いないですしね

5普及への努力

2005年7月その3-2 五輪除外祭り夜の部|プロ野球の視聴率を語るblog

  >The UIPM reports a low number of media accreditation requests at
  >the last two World Championships. It also reports a high number of
  >countries which broadcast the last two World Championships, despite
  >a very low number of countries which paid for TV rights for the last
  >two World Championships.

  積極的には報道してもらえないのね。実は、近代五種の世界選手権は世界
  150ヶ国に配信されています。そのうち放映権料を払っているのは4ヶ国なの
  ですが。「金払ってまで見たくないが、ただなら見たい」競技。これを
  どう評価すべきか。まぁ、「タダでいいから見てください」は普及にかける
  情熱とも解釈できるよね。

というなことをしたりしている。競技の性質上普及が非常に難しいとはいえ、普及に関してこういう努力をしていますよという姿勢はIOCとしても無視はできないでしょう


まあそれでも現状オリンピック競技として残るには依然として厳しいのに変わりないかと。特に野球、ソフトボールの削除が決定しているため、今後真っ先に削除対象になる可能性が高いでしょうし、また空手、スカッシュといった近代五種より国際競技連盟加盟国が多い競技が正式競技採用への活動をしており近代五種を削除して代わりにそれらの競技が採用という事も充分ありえる
日本には馴染みの薄い競技とはいえこういうマイナー競技もオリンピックを彩るものの一つと個人的には思っているので今後どうなるかひそかに注目しています