「金持ち、企業からだけ税金を取る」を実際にやっていた江戸の町

企業と金持ち「だけ」から税金を取るようにしてみてはどうか - 分裂勘違い君劇場
かつて日本ではこの「金持ち、企業からだけ税金を取る」ということを実際にやっていたことがあります。それが江戸時代の江戸です

江戸時代の税金

江戸時代の税金といってまず思い浮かべるのは「年貢」でしょうか。といっても年貢は農民だけで江戸の町人に年貢はありませんでした。とはいえ全く町人に税金が無かったわけではなく公役、国役*1といった税金や税金ではありませんが町入用といいう自治会費を支払っていました。また商人には冥加金、運上金、御用金といった税金*2が課せられていました。もっともその税負担は農民に比べればはるかに軽かったようです
そして「町人」という言葉から誤解されがちなのですが江戸時代において町人とは
wikipedia:町人

しかしながら、単なる商工身分の者全般を町人と呼ぶわけではなく、特にブルジョワ階級である旦那衆のことを指し、家屋敷を所有する者のことを言う。また町政や公事にも参加し、町年寄を選ぶ選挙権や被選挙権を持つなど、社会的身分や公的権利・義務を持つ者である。

という人たちであり各税金や町入用を支払っていたのはこういった富裕層や大商人だけで、時代劇に出てくるようないわゆる裏長屋に住んでいた庶民は基本的に税金を支払ってはいませんでした。まさに金持ち、企業からだけ税金を取っていた世界なわけです

税金が無いことによる庶民の暮らしへの影響

このように江戸の庶民は税金が無かった。さらに現代だと暮らしていく上で負担が重い住居費も安かった。江戸時代の庶民が主に起居していたのは裏長屋と呼ばれる住まい。この裏長屋は四畳半で押し入れ無しで土間一つというのが基本でまさに寝るためだけの住まいなんだけどとにかく家賃が安かった。一番安いところで四百文といわれている。これはその当時大工なら日当以下、振り売りといわれる零細の商人でも二日分の稼ぎ程度の金額。今で言えば一ヶ月5000〜10000円程度といったところですかね。それでも家賃滞納者はたくさんいたそうですが、家主もたいして強く取り立てはしなかったとか。そして物価も安かった。といっても着物や家具のようなものは高かったのです食料品のような日用品は比較的安価でした*3
もっともこの時代は賃金もまた安かったのですがこういう生活にかかる負担が少ないため贅沢しなければあくせく働かなくても充分生活ができてしまった。そのためなのかその日暮らしや今でいうフリーター稼業がとにかく多かったといわれています。懐が寂しくなると働くが何かしら懐にあれば働かないそういう生活をしてる人たちがかなりいたとか。そしてそういう身軽に暮らすことが江戸の町では良しとされていたといいます(出世のためにあくせくすることはみっともないと考えがあったようです)


もし現代で同じように「金持ち、企業からだけ税金を取る」ということをしたらどうなるのか。この江戸の町の事情が参考になるんじゃないかと思います

余談

ちなみこういう生活をしているのはほとんどが独身男性です。江戸の町は男性と女性の比率がだいたい2:1くらいといわれていて、庶民で結婚できる男性はかなり少なかった。だいたいひとつの長屋で1〜2人結婚していればよいほうだといわれています。こういう独身男性が多かったこと。そして江戸では火事のような天災が非常に多く、一夜の火事で全てが灰になることも珍しくなかったこと。これらの事もその日暮らしやフリーター稼業のような身軽者が多かった要因でもあるのでしょう

*1:公役は今でいう固定資産税のようなもの、国役は幕府に対する労働力の提供。後にお金で納めることが多くなった

*2:冥加金は献金の性格が強い、また御用金は正確には幕府が発行する臨時の公債

*3:江戸時代の物価についてはこちらが参考になるかと思います