コンサートプロモーターズ協会の基礎調査報告書から見る2011年のライブの動向

一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(以下ACPC)のサイトで2011年のライブの市場規模調査のデータが公開されましたので、その動向を見てみました。
※あくまでACPCに加盟している会員(56社)のデータである点を注意して下さい。
※2010年はコンサートプロモーターズ協会の2010年基礎調査報告書から見るライブの動向を見て下さい。

2011年のライブの動向

※数字はACPC基礎調査 平成23年より。
※公演数や動員数(入場者数)などの各数字はライブエンタテイメント約款の第一条2項に、
ライブエンタテイメント約款

この約款において「入場者」とは、入場券を購入等(無償で招待券を入手した場合を含みます。以下同じ。)して公演に入場する者をいいます。この約款において入場者は、入場料を支払うことにより入場券を購入したものとみなされます。

とあるため、チケットを販売するような有料のライブが対象と思われます。

2011年 2010年 前年比 伸び率
公演数 18,442 18,112 +330 101%
総動員(入場者)数 2773万人 2618万人 +155万人 105%
総売上 1596億2000万円 1280億3900万円 +315億8100万円 124%
著作権使用料 16億1600万円 15億7600万円 +4000万円 102%
会員数 56社 56社 ±0 100%

公演数、総動員数、総売上、著作権使用料、いずれも2010年を上回りかつ過去最高を更新しています。そして以下はそれぞれの推移になります。

公演数
公演数
1989年 8,900本
1990年 12,000本
1991年 11,000本
1992年 10,000本
1993年 8,500本
1994年 9,000本
1995年 9,000本
1996年 9,100本
1997年 8,600本
1998年 9,500本
1999年 9,500本
2000年 10,500本
2001年 9,910本
2002年 10,650本
2003年 13,050本
2004年 14,323本
2005年 13,982本
2006年 13,837本
2007年 14,435本
2008年 15,522本
2009年 17,391本
2010年 18,112本
2011年 18,442本

総動員(入場者)数

※単位:万人

総動員(入場者)数
1989年 1,500万人
1990年 1,700万人
1991年 1,500万人
1992年 1,500万人
1993年 1,450万人
1994年 1,500万人
1995年 1,500万人
1996年 1,410万人
1997年 1,300万人
1998年 1,430万人
1999年 1,610万人
2000年 1,670万人
2001年 1,601万人
2002年 1,670万人
2003年 1,818万人
2004年 1,718万人
2005年 2,016万人
2006年 1,978万人
2007年 2,097万人
2008年 2,253万人
2009年 2,606万人
2010年 2,618万人
2011年 2,773万人

総売上(年間売上額)

※単位:百万円

総売上(年間売上額)
1996年 719億100万円
1997年 690億9600万円
1998年 710億7400万円
1999年 814億700万円
2000年 825億9200万円
2001年 776億5000万円
2002年 814億8900万円
2003年 942億8200万円
2004年 900億9200万円
2005年 1049億2700万円
2006年 924億7500万円
2007年 1040億6400万円
2008年 1074億9500万円
2009年 1255億400万円
2010年 1280億3900万円
2011年 1596億2000万円

著作権使用料
著作権使用料額
2003年 4億3500万円
2004年 5億3400万円
2005年 6億1500万円
2006年 8億7900万円
2007年 9億4600万円
2008年 10億5700万円
2009年 15億3900万円
2010年 15億7600万円
2011年 16億1600万円


1回の公演あたりの平均動員数(入場者数)と平均売上、及び1人あたりの平均売上額

それと、一回の公演あたりの動員数と売上、あと1人あたりの売上額の単純平均を計算してみました。

1公演あたりの平均動員数
1公演あたりの平均動員数
1989年 1,685人
1990年 1,417人
1991年 1,364人
1992年 1,500人
1993年 1,706人
1994年 1,667人
1995年 1,667人
1996年 1,549人
1997年 1,512人
1998年 1,505人
1999年 1,695人
2000年 1,590人
2001年 1,616人
2002年 1,568人
2003年 1,393人
2004年 1,199人
2005年 1,442人
2006年 1,430人
2007年 1,453人
2008年 1,451人
2009年 1,498人
2010年 1,445人
2011年 1,504人

1公演あたりの平均売上額
1公演あたりの平均売上額
1996年 790万円
1997年 803万円
1998年 748万円
1999年 856万円
2000年 786万円
2001年 783万円
2002年 765万円
2003年 722万円
2004年 629万円
2005年 750万円
2006年 668万円
2007年 720万円
2008年 692万円
2009年 721万円
2010年 709万円
2011年 865万円

1公演の1人あたりの売上額
1公演の1人あたりの売上額
1996年 5,099円
1997年 5,315円
1998年 4,970円
1999年 5,056円
2000年 4,946円
2001年 4,850円
2002年 4,880円
2003年 5,186円
2004年 5,244円
2005年 5,205円
2006年 4,675円
2007年 4,963円
2008年 4,771円
2009年 4,816円
2010年 4,891円
2011年 5,756円


ジャンル別と会場別の公演数と動員数

次に国内アーティストと海外アーティストのジャンル別と会場別の公演数と動員数を見てみます。
※単位は公演数が回、動員数が人になります。
※パフォーミングアーツはミュージカルやバレエなどが対象になります。

会場別の公演数と動員数

国内アーティストの会場別公演数
2011年 2010年 前年比 伸び率
スタジアム、アリーナ 875 693 +182 126.3%
ホール 7,591 7,566 +25 100.3%
ライブハウス 7,549 7,688 −139 98.2%
野外 417 427 −10 97.7%
その他 305 433 −128 70.4%
合計 16,737 16,807 −70 99.6%
国内アーティストの会場別動員数
2011年 2010年 前年比 伸び率
スタジアム、アリーナ 602万6950 430万1864 +172万5086 140.1%
ホール 986万6765 1048万3562 −61万6797 94.1%
ライブハウス 230万9845 231万8495 −8650 99.6%
野外 471万7766 541万3371 −69万5605 87.2%
その他 56万5325 32万3957 +24万1368 174.5%
合計 2348万6651 2284万1249 +64万5402 102.8%
海外アーティストの会場別公演数
2011年 2010年 前年比 伸び率
スタジアム、アリーナ 201 154 +47 130.5%
ホール 568 614 −46 92.5%
ライブハウス 358 401 −43 89.3%
野外 38 10 +28 380.0%
その他 540 126 414 +428.6%
合計 1,705 1305 +400 130.7%
海外アーティストの会場別動員数
2011年 2010年 前年比 伸び率
スタジアム、アリーナ 148万1632 169万2149 −21万0517 87.6%
ホール 81万4477 104万6020 −23万1543 77.9%
ライブハウス 15万0809 18万9838 −3万9029 79.4%
野外 77万1171 19万4254 +57万6917 397.0%
その他 102万9950 22万3586 80万6364 460.7%
合計 424万8039 334万5847 +90万2192 127.0%

ジャンル別の公演数と動員数

国内アーティストのジャンル別公演数
2011年 2010年 前年比 伸び率
ロック・ポップス 13,261 13,552 −291 97.9%
謡曲・演歌 465 354 +111 131.4%
ジャズ・フュージョン 146 120 +26 121.7%
クラシック 227 211 +16 107.6%
パフォーミングアーツ 1,201 1,549 −348 77.5%
その他 1,437 1,021 +416 140.7%
合計 16,737 16,807 −70 99.6%
国内アーティストのジャンル別動員数
2011年 2010年 前年比 伸び率
ロック・ポップス 1891万8134 1834万6143 +57万1991 103.1%
謡曲・演歌 87万1344 71万0130 +16万1214 122.7%
ジャズ・フュージョン 10万8132 9万6134 +1万1998 112.5%
クラシック 24万1292 25万1229 −9937 96.0%
パフォーミングアーツ 144万901 190万4771 −46万3870 75.6%
その他 190万6848 153万2842 +37万4006 124.4%
合計 2348万6651 2284万1249 +64万5402 102.8%
海外アーティストのジャンル別公演数
2011年 2010年 前年比 伸び率
ロック・ポップス 925 842 +83 109.9%
謡曲・演歌 4 3 +1 133.3%
ジャズ・フュージョン 29 29 ±0 100.0%
クラシック 40 49 −9 81.6%
パフォーミングアーツ 583 352 +231 165.6%
その他 124 30 +94 413.3%
合計 1,705 1,305 +400 130.7%
海外アーティストのジャンル別動員数
2011年 2010年 前年比 伸び率
ロック・ポップス 255万6037 195万3886 +60万2151 130.8%
謡曲・演歌 1万1869 3408 +8461 348.3%
ジャズ・フュージョン 3万3573 4万6804 −1万3231 71.7%
クラシック 7万7237 7万4495 +2742 103.7%
パフォーミングアーツ 129万6751 100万8050 +28万8701 128.6%
その他 27万2572 25万9204 +1万3368 105.2%
合計 424万8039 334万5847 +90万2192 127.0%

ライブは音楽産業の中心になっていくのか?

最初、公演数や動員数に比べて、売上額が伸びているのは何故だろうと思ったのですが、会場別の公演数と動員数を見ると国内アーティストだとスタジアムやアリーナ、海外アーティストだと野外と、比較的大きな場所のライブの公演数と動員数が伸びたのが要因のようです。それと、ライブのほとんどは音楽系ですので日本レコード協会が公開している音楽ソフトの生産金額と有料音楽配信の売上と比較するとこうなっています。

ライブの年間売上と音楽ソフトの生産金額と有料音楽配信売上の比較

※音楽ソフトの生産金額は一般社団法人 日本レコード協会|各種統計|音楽ソフト種類別生産金額の推移、有料音楽配信の売上は一般社団法人 日本レコード協会|各種統計|有料音楽配信売上実績の2005年〜2011年の売上より抜粋。

ライブの年間総売上 音楽ソフト生産金額 有料音楽配信売上
1996年 719億100万円 5838億6200万円 *
1997年 690億9600万円 5880億1900万円 *
1998年 710億7400万円 6074億9400万円 *
1999年 814億700万円 5695億5100万円 *
2000年 825億9200万円 5398億1600万円 *
2001年 776億5000万円 5030億6100万円 *
2002年 814億8900万円 4814億5400万円 *
2003年 942億8200万円 4561億7900万円 *
2004年 900億9200万円 4312億6900万円 *
2005年 1049億2700万円 4222億1000万円 342億8300万円
2006年 924億7500万円 4084億800万円 534億7800万円
2007年 1040億6400万円 3911億1300万円 754億8700万円
2008年 1074億9500万円 3617億7500万円 905億4700万円
2009年 1255億400万円 3165億1500万円 909億8200万円
2010年 1280億3900万円 2836億1200万円 859億9000万円
2011年 1596億2000万円 2818億5000万円 719億6100万円


ここ数年は緩やかになりつつあるとはいえ下落傾向が続く音楽ソフトや、スマートフォンの普及もあり着うたフルの売上減少で苦戦している有料音楽配信とは違い、ライブは順調に売上を伸ばしています。上記にも書きましたが、このライブの売上はACPCに加盟している会員の数字であり、ライブ全体の売上はこの数字以上にあると思われますので、音楽産業におけるライブの比重はかなり大きくなってきているのではないかと思います。
では、このままライブが売上を伸ばして音楽ソフトを上回る事ができるかというと、現時点だとちょっと難しいのかなと。その理由の一つがライブの利益面。例としてエイベックス・グループHDの2012年3月期 連結業績説明資料にあるライブ、音楽パッケージ、音楽配信の売上高、売上原価、売上純利益を見るとこうなっています。
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社|IR情報|IR資料室|最新資料2012年3月期 連結業績説明資料(PDF)より。

ライブ 音楽パッケージ 音楽配信
売上高 177億2000万円 444億9000万円 183億円
売上原価 158億円 269億1000万円 99億2000万円
売上純利益 19億1000万円 175億8000万円 83億8000万円
売上純利益率 10.7% 39.5% 45.7%

さらにライブにマネジメント、マーチャンダイジング、ファンクラブなどを加えた「マネジメント・ライブ事業」と、音楽パッケージ、音楽配信音楽出版などを加えた「音楽事業」で比べるとこうなります。

マネジメント・ライブ事業 音楽事業
売上高 348億1000万円 706億4000万円
売上原価 238億9000万円 420億8000万円
売上純利益 109億1000万円 285億5000万円
販管費 94億3000万円 201億1000万円
営業利益 14億7000万円 84億3000万円
売上純利益率 31.3% 40.4%
営業利益率 4.2% 11.9%

※ちなみエイベックス・グループHDのライブの単価や公演数などは以下のようになります。

平均単価 8.375円
公演数 379*1
動員数 139万人


音楽パッケージや音楽配信に比べるとライブの利益率はかなり低い。ライブは会場の使用料、設営費、機材の費用、各種人件費など費用がかかりやすいと思われますので、仕方ない面もあるでしょうが、エイベックスのような比較的ライブの単価が高めで、動員数も多い会社ですらこの利益率ですから、他の会社だとほとんど利益が出ない、もしくは赤字というところもあるのではないかと。また、ライブは会場に人を集める必要があるため動員数にもおのずと限界がある。今後、このあたりの事を解決できればライブが音楽ソフトに代わり音楽産業の中心になっていくかもしれません。

*1:公演数内訳>スタジアム:15。アリーナ:55。ホール・ライブハウス:309