保釈中に「罪証隠滅」や「逃亡」をする人がどのくらいいるかを、保釈を取り消された人数から考えてみました
【PC遠隔操作事件】「罪証隠滅のおそれ」って何??名(元)裁判官・原田國男氏が語る”裁判官マインド”(江川 紹子) - 個人 - Yahoo!ニュース
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思うのだが、実際に保釈して「罪証隠滅」されたり「逃亡」されたりしたケースってどれくらいあるのだろう
というコメントを見て、確かに実際の件数というのはどのくらいなんだろうと私も気になりました。それで、その事に関する資料を探してみたのですが司法統計の「勾留・保釈関係の手続及び終局前後別人員」にある「保釈を取り消された人数」が参考になりそうかなと。というのも保釈というのは裁判所の判断により保釈を取り消す事ができ、刑事訴訟法ではその条件を以下のように定めています。
刑事訴訟法
第九十六条 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
保釈を取り消されるのは実際に逃亡や罪証隠滅をした以外にも、それをするおそれがある事。召喚を受けても出頭しない。被害者や証人に危害を加える、または危害を加えるおそれがある場合。住所の制限など保釈をする時に裁判所が定めた条件に違反するなど、逃亡や証拠隠滅をしただけでは無いのですが一つの目安にはなると思いますので、保釈を取り消された件数を司法統計で見ることが出来る2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)までを保釈に関する他の数字を含めてまとめてみました。
2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)までの保釈に関するデータ
※「勾留状を発行された被告人数」、「保釈を許可された人数」、「保釈を取り消された人数」は裁判所 | 司法統計の刑事事件編にある、2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)までの「勾留・保釈関係の手続及び終局前後別人員 全裁判所及び最高,全高等・地方・簡易裁判所」より抜粋。
※「保釈の請求数」は2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)までの「刑事雑事件の種類別新受人員 全裁判所及び最高,全高等・地方・簡易裁判所」より抜粋。
※対象は全裁判所(最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所)の合計になります。
※終局前と終局後を合計していますので、保釈に関する数値データ - 日本保釈支援協会にある人数とは若干異なっています。
※各数字は後に訂正される可能性があります。
2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)までの「勾留状を発行された被告人数」、「保釈の請求数」、」「保釈を許可された人数」、「保釈を取り消された人数」。
勾留状を発行された被告人数(A) | 保釈の請求数(B) | 保釈を許可された人数(C) | 保釈を取り消された人数 | |
---|---|---|---|---|
2000年度(平成12年度) | 68,816 | 18,967 | 9,264 | 41 |
2001年度(平成13年度) | 73,473 | 19,461 | 9,561 | 24 |
2002年度(平成14年度) | 78,767 | 19,571 | 10,521 | 28 |
2003年度(平成15年度) | 86,662 | 19,807 | 10,178 | 23 |
2004年度(平成16年度) | 85,068 | 20,298 | 10,589 | 50 |
2005年度(平成17年度) | 83,869 | 20,247 | 10,805 | 53 |
2006年度(平成18年度) | 80,780 | 22,156 | 11,644 | 112 |
2007年度(平成19年度) | 76,682 | 20,174 | 11,403 | 36 |
2008年度(平成20年度) | 72,880 | 19,127 | 11,058 | 29 |
2009年度(平成21年度) | 70,786 | 20,342 | 11,513 | 55 |
2010年度(平成22年度) | 65,794 | 21,643 | 12,161 | 54 |
2011年度(平成23年度) | 58,877 | 20,571 | 12,021 | 56 |
保釈の請求率と許可率
保釈の請求率(B/A) | 保釈の請求数に対する許可率(C/B) | 拘留数に対する保釈の許可率(C/A) | |
---|---|---|---|
2000年度(平成12年度) | 27.6% | 48.8% | 13.5% |
2001年度(平成13年度) | 26.5% | 49.1% | 13.0% |
2002年度(平成14年度) | 24.8% | 53.8% | 13.4% |
2003年度(平成15年度) | 22.9% | 51.4% | 11.7% |
2004年度(平成16年度) | 23.9% | 52.2% | 12.4% |
2005年度(平成17年度) | 24.1% | 53.4% | 12.9% |
2006年度(平成18年度) | 27.4% | 52.6% | 14.4% |
2007年度(平成19年度) | 26.3% | 56.5% | 14.9% |
2008年度(平成20年度) | 26.2% | 57.8% | 15.2% |
2009年度(平成21年度) | 28.7% | 56.6% | 16.3% |
2010年度(平成22年度) | 32.9% | 56.2% | 18.5% |
2011年度(平成23年度) | 34.9% | 58.4% | 20.4% |
保釈を取り消された人の割合
保釈を許可された人数 | 保釈を取り消された人数 | 保釈を取り消された割合 | |
---|---|---|---|
2000年度(平成12年度) | 9,264 | 41 | 0.44% |
2001年度(平成13年度) | 9,561 | 24 | 0.25% |
2002年度(平成14年度) | 10,521 | 28 | 0.27% |
2003年度(平成15年度) | 10,178 | 23 | 0.23% |
2004年度(平成16年度) | 10,589 | 50 | 0.47% |
2005年度(平成17年度) | 10,805 | 53 | 0.49% |
2006年度(平成18年度) | 11,644 | 112 | 0.96% |
2007年度(平成19年度) | 11,403 | 36 | 0.32% |
2008年度(平成20年度) | 11,058 | 29 | 0.26% |
2009年度(平成21年度) | 11,513 | 55 | 0.48% |
2010年度(平成22年度) | 12,161 | 54 | 0.44% |
2011年度(平成23年度) | 12,021 | 56 | 0.47% |
2000年度〜2011年度累計 | 130,718 | 561 | 0.43% |
保釈を許可される人数と割合は増加傾向にあり2011年度は「勾留状を発行された被告人数」つまり拘留された人数が58,877人に対して、保釈の請求数は20,571で保釈の請求率は34.9%。そして保釈を許可された人数は12,021人で保釈の請求数に対する許可率は58.4%、拘留された人数全体対する保釈の許可率は20.4%となります。また、保釈を許可された人の中で保釈を取り消された人は56人で割合は0.47%。2000年度から2011年度の累計で見ても保釈を取り消された人の割合は0.43%程度になります。上記の刑事訴訟法第96条にあるとおり保釈の取消は逃亡や証拠隠滅以外でも取り消されることがあるため、実際に保釈中に逃亡や証拠隠滅をした人の割合はさらに下がるかと思います。
裁判官や検察側としては保釈中に逃亡や罪証隠滅を起こされる事をおそれるというのはわかるのですが、数字で見るかぎりでは保釈中に保釈を取り消さるような事をする人は保釈金の没取もありますしレアケースなのではないかと思います。なので、2011年度の保釈の請求に対する保釈の許可率は58.4%ですが、殺人のような凶悪事件でもないかぎりは保釈を請求されたら原則許可するぐらいでも良いのではないかと個人的にはそう考えています。