警察庁の統計資料から見る暴力団の犯罪
この記事で参考にした警察庁の統計資料ですが他にも興味深い統計がいくつかあります。その中で「暴力団対策に関する統計」から暴力団の犯罪動向を見てみようよ思います
※資料は警察庁の暴力団対策に関する統計等より
刑法犯の検挙人員と検挙件数
まずは直近の年である平成20年(2008年)の暴力団構成員及び準構成員(以下この記事では暴力団関係者と記します)の刑法犯の検挙人数と検挙件数を平成20年の暴力団情勢(確定値版)(pdf)から見てみます
罪種名 | 検挙人員 | 割合 | 罪種名 | 検挙件数 | 割合 | |
---|---|---|---|---|---|---|
傷害 | 3,219人 | 19.82% | 窃盗 | 27,675件 | 64.96% | |
窃盗 | 3,028人 | 18.64% | 詐欺 | 3,938件 | 9.24% | |
恐喝 | 2,013人 | 12.39% | 傷害 | 2,782件 | 6.53% | |
詐欺 | 1,846人 | 11.37% | 恐喝 | 1,578件 | 3.70% | |
暴行 | 1,235人 | 7.60% | 暴行 | 1,257件 | 2.95% | |
その他刑法犯 | 704人 | 4.33% | その他刑法犯 | 1,218件 | 2.86% | |
賭博 | 639人 | 3.93% | 器物損壊 | 960件 | 2.25% | |
脅迫 | 625人 | 3.85% | 文書偽造 | 838件 | 1.97% | |
器物損壊 | 547人 | 3.37% | 脅迫 | 554件 | 1.30% | |
強盗 | 534人 | 3.29% | 公務執行妨害 | 488件 | 1.15% | |
公務執行妨害 | 457人 | 2.81% | 強盗 | 388件 | 0.91% | |
文書偽造 | 353人 | 2.17% | 賭博 | 154件 | 0.36% | |
逮捕監禁 | 239人 | 1.47% | わいせつ物頒布等 | 146件 | 0.34% | |
殺人 | 220人 | 1.35% | 逮捕監禁 | 126件 | 0.30% | |
わいせつ物頒布等 | 197人 | 1.21% | 殺人 | 125件 | 0.29% | |
横領 | 99人 | 0.61% | 横領 | 125件 | 0.29% | |
強姦 | 94人 | 0.58% | 強姦 | 95件 | 0.22% | |
信用毀損・威力業務妨害 | 62人 | 0.38% | 放火 | 45件 | 0.11% | |
犯人蔵匿 | 47人 | 0.29% | 信用毀損・威力業務妨害 | 44件 | 0.10% | |
放火 | 44人 | 0.27% | 犯人蔵匿 | 43件 | 0.10% | |
暴力行為 | 22人 | 0.14% | 暴力行為 | 13件 | 0.03% | |
凶器準備集合 | 13人 | 0.08% | 凶器準備集合 | 4件 | 0.01% | |
証人威迫 | 5人 | 0.03% | 証人威迫 | 4件 | 0.01% | |
合計 | 16,242人 | 100% | 合計 | 42,600件 | 100% |
平成20年の暴力団関係者の刑法犯の検挙人員は16,242人、検挙件数が42,600件となっています。これがどれくらい全体の検挙人員、検挙件数に占めるかというと
刑法犯の総検挙人員 | 暴力団関係者の刑法犯検挙人員 | 割合 | ||
---|---|---|---|---|
平成20年(2008年) | 339,752人 | 16,242人 | 4.78% |
刑法犯の総検挙件数 | 暴力団関係者の刑法犯検挙件数 | 割合 | |
---|---|---|---|
平成20年(2008年) | 573,392件 | 42,600件 | 7.42% |
となります。これが多いと見るか少ないと見るかは人によって判断が分かれるかなと
ちなみに平成20年の暴力団情勢(確定値版)(pdf)には平成16年(2004年)からの数字も記載されてるので、その平成16年からの刑法犯の総検挙人数、検挙件数と暴力団関係者の検挙人員及び検挙件数もまとめてみました
刑法犯の総検挙人員 | 暴力団関係者の刑法犯検挙人員 | 割合 | |
---|---|---|---|
平成16年(2004年) | 389,027人 | 19,472人 | 5.00% |
平成17年(2005年) | 386,955人 | 18,629人 | 4.81% |
平成18年(2006年) | 384,250人 | 18,016人 | 4.68% |
平成19年(2007年) | 365,577人 | 16,621人 | 4.54% |
平成20年(2008年) | 339,752人 | 16,242人 | 4.78% |
刑法犯の総検挙件数 | 暴力団関係者の刑法犯検挙件数 | 割合 | |
---|---|---|---|
平成16年(2004年) | 667,620件 | 38,944件 | 5.83% |
平成17年(2005年) | 649,503件 | 41,077件 | 6.32% |
平成18年(2006年) | 640,657件 | 42,743件 | 6.67% |
平成19年(2007年) | 605,358件 | 43,002件 | 7.10% |
平成20年(2008年) | 573,392件 | 426,00件 | 7.42% |
特別法犯の検挙人員と検挙件数
次に覚醒剤取締法や銃刀法、風営法といった特別法犯の平成20年(2008年)の検挙人員と検挙件数を見てみます
※資料は同じく平成20年の暴力団情勢(確定値版)(pdf)より
罪種名 | 検挙人員 | 割合 | 罪種名 | 検挙件数 | 割合 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
覚醒剤取締法 | 5,735人 | 58.39% | 覚醒剤取締法 | 8,406件 | 59.99% | ||
大麻取締法 | 843人 | 8.58% | 大麻取締法 | 1,354件 | 9.66% | ||
風営適正化法 | 516人 | 5.25% | その他の特別法反 | 594件 | 4.24% | ||
その他の特別法反 | 460人 | 4.68% | 銃刀法 | 578件 | 4.13% | ||
銃刀法 | 416人 | 4.24% | 売春防止法 | 514件 | 3.67% | ||
軽犯罪法 | 234人 | 2.38% | 風営適正化法 | 416件 | 2.97% | ||
迷惑防止条例 | 190人 | 1.93% | 麻薬等取締法 | 344件 | 2.46% | ||
毒劇物法 | 155人 | 1.58% | 軽犯罪法 | 257件 | 1.83% | ||
廃棄物処理法 | 145人 | 1.48% | 麻薬等特例法 | 202件 | 1.44% | ||
貸金業法 | 130人 | 1.32% | 毒劇物法 | 181件 | 1.29% | ||
出資法 | 126人 | 1.28% | 迷惑防止条例 | 177件 | 1.26% | ||
児童福祉法 | 123人 | 1.25% | 貸金業法 | 150件 | 1.07% | ||
麻薬等取締法 | 119人 | 1.21% | 出資法 | 145件 | 1.03% | ||
出入国管理・難民認定法 | 111人 | 1.13% | 出入国管理・難民認定法 | 134件 | 0.96% | ||
売春防止法 | 110人 | 1.12% | 廃棄物処理法 | 134件 | 0.96% | ||
青少年保護育成条例 | 97人 | 0.99% | 児童福祉法 | 128件 | 0.91% | ||
麻薬等特例法 | 79人 | 0.80% | 青少年保護育成条例 | 120件 | 0.86% | ||
自転車競技法 | 48人 | 0.49% | 自転車競技法 | 29件 | 0.21% | ||
競馬法 | 41人 | 0.42% | 職業安定法 | 25件 | 0.18% | ||
モーターボート競争法 | 36人 | 0.37% | モーターボート競争法 | 23件 | 0.16% | ||
建設業法 | 28人 | 0.29% | 競馬法 | 21件 | 0.15% | ||
職業安定法 | 20人 | 0.20% | 建設業法 | 18件 | 0.13% | ||
労働者派遣事業法 | 16人 | 0.16% | 火薬類取締法 | 15件 | 0.11% | ||
暴力団対策法 | 10人 | 0.10% | 労働者派遣事業法 | 11件 | 0.08% | ||
労働基準法 | 9人 | 0.09% | 旅券法 | 9件 | 0.06% | ||
旅券法 | 8人 | 0.08% | めいてい者規制法 | 7件 | 0.05% | ||
めいてい者規制法 | 5人 | 0.05% | 暴力団対策法 | 7件 | 0.05% | ||
小型自動車競争法 | 5人 | 0.05% | 労働基準法 | 7件 | 0.05% | ||
火薬類取締法 | 4人 | 0.04% | 小型自動車競争法 | 2件 | 0.01% | ||
健康保険法 | 2人 | 0.02% | あへん法 | 2件 | 0.01% | ||
宅地建物取引業 | 1人 | 0.01% | 宅地建物取引業法 | 1件 | 0.01% | ||
あへん法 | 0人 | 0.00% | 健康保険法 | 1件 | 0.01% | ||
合計 | 9,822人 | 100% | 合計 | 14,012件 | 100% |
暴力団関係者の特別法犯検挙人員 | 暴力団関係者の特別法犯検挙件数 | |
---|---|---|
平成16年(2004年) | 9,853人 | 12,361件 |
平成17年(2005年) | 10,977人 | 15,131件 |
平成18年(2006年) | 104,01人 | 14,814件 |
平成19年(2007年) | 10,548人 | 14,522件 |
平成20年(2008年) | 9,822人 | 14,012件 |
暴力団関係者による特別法犯の検挙人員、検挙件数の中で多くを占めているのが覚醒剤取締法によるものですが、警察庁の統計資料で見ることができる平成13年(2001年)からの検挙件数はこんな感じで推移しています
最近の暴力団の犯罪の特徴
なんだかんだで暴力団も組織であり、そして組織を維持する以上資金は必要な訳でそういうお金になりやすい犯罪での検挙が多い。また平成20年の暴力団情勢(確定値版)(pdf)には最近の暴力団の資金獲得のための犯罪についての特徴をこう述べています
最近の暴力団等の資金獲得犯罪の特徴
最近の暴力団は、前期のとおり伝統的な資金獲得犯罪や各種業への介入のほか、証券取引や不動産取引の利用による犯罪やいわゆる犯罪インフラ事犯を敢行するなど資金活動を巧妙化、多様化させており、暴力団が、その時々の社会経済情勢の変化に対応して、多額の資金を獲得できるポイントを巧みに探り当てながら資金活動を行っている状況がうかがわれる。
特に、証券取引や不動産取引においては、暴力団に資金を提供し、又は暴力団から提供を受けた資金を運用した利益を暴力団に還元するなどして、暴力団の資金獲得活動に協力、又は関与する、いわゆる共生者の存在がうかがわれる
暴力団も法や規制を逃れてるために犯罪がどんどん複雑、高度化していく。そしてそれに対応するために警察や行政も動く。このイタチごっこもいつまで続くのか。本当に先の見えない戦いだと思う