日本レコード協会の2011年第1四半期の統計から見る有料音楽配信の苦戦とシングルCDの好調

一般社団法人 日本レコード協会にて2011年第1四半期(1月〜3月)の有料音楽配信の売上実績が公開されましたがなかなか厳しい状況のようです。
2011年第1四半期(1月〜3月)有料音楽配信売上実績について

2011年第1四半期は、数量で前年同期比91%の1億177万ダウンロード、金額で前年同期比88%の193億3,700万円となりました。

内訳はこうなっています。
※数量はダウンロードされた回数。

インターネットダウンロード
数量 前年同期比 金額 前年同期比
シングルトラック 1302万3000 122% 18億2700万円 112%
アルバム 78万9000 113% 8億7400万円 99%
音楽ビデオ 67万5000 148% 1億7500万円 121%
その他 0 5400% 0 -
合計 1448万7000 122% 28億7600万円 108%
モバイル
数量 前年同期比 金額 前年同期比
Ringtunes(着うた) 2629万9000 76% 26億5400万円 75%
Ringback tunes(待ちうた、メロディコールなど) 2777万1000 97% 24億1900万円 96%
シングルトラック(着うたフルなど) 2946万1000 84% 101億8000万円 84%
音楽ビデオ 172万 90% 6億8900万円 100%
その他 61万5000 333% 2億8400万円 156%
合計 8586万5000 86% 162億2600万円 85%
その他
数量 前年同期比 金額 前年同期比
サブスクリプション(インターネット) - - 7400万円 50%
サブスクリプション(モバイル) - - 7900万円 88%
その他のデジタル音楽コンテンツ 141万9000 2410% 8200万円 79%
総合計
数量 前年同期比 金額 前年同期比
1億177万2000 91% 193億3700万円 88%


インターネットダウンロードが堅調な伸びを見せているものの、日本の有料音楽配信の主力であるモバイルが前年同期に比べ数量で14%減、売上金額で15%減と大きく落ち込んでいます。その落ち込みの原因はシングルトラック(着うたフルなど)であると思われます。これまでRingtunes(着うた)の落ち込みをシングルトラックの伸びが支えてきたのが2009年あたりから伸びが見られなくなり、そしてここにきて大きくマイナスに転じてしまったためにモバイル及び有料音楽配信全体の大きな落ち込みに繋がってしまったかなと。もっともまだ第1四半期の結果のため今後盛り返す可能性もあるとは思いますが。
ちなみに有料音楽配信の2011年第1四半期の総合計は数量が1億177万2000、前年同期比91%。売上金額が193億3700万円、前年同期比88%ですが、同じく第1四半期のCDの生産実績を見てみると邦楽、洋楽合わせた合計は数量が4562万3000枚、前年同期比94%。金額が492億3700万円、前年同期比92%となっており、落ち込み幅だとCDより有料音楽配信のほうが大きかったりします。

好調なシングルCD

さて、まだ第1四半期の結果ではありますが厳しい状況の有料音楽配信(主にモバイル)とは逆に好調なのがシングルCDです。シングルCDは2010年にAKB48と嵐がランキングを席巻し*1年間の生産実績が数量5061万枚、前年比113%。金額372億7800万円、前年比109%と2006年以来の前年比増となりましたが、2011年に入ってもその好調さは続いているようで、

2011年1月〜4月のシングルCD生産実績

※数字は一般社団法人 日本レコード協会|各種統計|生産実績より各月のシングルCDの数量と金額を抜粋

数量 前年同期比 金額 前年同期比
1月 401万2000枚 136% 27億8800万円 127%
2月 552万9000枚 157% 35億3500万円 137%
3月 308万1000枚 107% 21億9000万円 108%
4月 433万5000枚 110% 32億7600万円 121%
1月〜4月合計 1695万7000枚 127% 117億8900万円 124%

1月から4月まですべての月で数量、金額とも前年同月比増なっています*2。特に震災の影響が大きいであろう3月や4月でも前年同月比増となっているのはちょっと驚きました。それでどんなシングルが売れているのかなとも思い、1月〜4月にゴールド認定されたシングルも見てみました。
※ゴールドと認定された作品は一般社団法人 日本レコード協会|各種統計|ゴールド認定作品より。
※ゴールドの認定基準枚数は以下の通りです。

ゴールド 累計100,000以上
プラチナ 250,000
ダブルプラチナ 500,000
トリプルプラチナ 750,000
ミリオン 1,000,000
1月ゴールド認定(シングル)
タイトル アーティス名
プラチナ Why?(Keep Your Head Down) 東方神起
ゴールド トイレの神様 植村 花菜
ゴールド If フレンチ・キス
ゴールド 「ありがとう」〜世界のどこにいても〜 Hey! Say! JUMP
ゴールド はだかんぼー 山下 智久
ゴールド It's My Life / Your Heaven YUI
ゴールド DADA RADWIMPS
2月ゴールド認定(シングル)
タイトル アーティスト名
ミリオン 桜の木になろう AKB48
トリプル・プラチナ ポニーテールとシュシュ AKB48
ダブル・プラチナ Lotus
プラチナ Dear J 板野 友美
プラチナ ULTIMATE WHEELS KAT-TUN
ゴールド 大声ダイヤモンド AKB48
ゴールド Each Other's Way 〜旅の途中〜 EXILE
ゴールド Blue Bird コブクロ
ゴールド 青いベンチ テゴマス
ゴールド Distance 西野 カナ
ゴールド 友達の唄 BUMP OF CHICKEN
ゴールド あの娘と野菊と渡し舟 氷川 きよし
ゴールド 狭心症 RADWIMPS
3月ゴールド認定(シングル)
タイトル アーティスト名
プラチナ Eternal 赤西 仁
プラチナ バンザイVenus SKE48
プラチナ 週末Not yet Not yet
ゴールド ユメタマゴ NYC
ゴールド Answer ノースリーブス
ゴールド グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011 マキシマム ザ ホルモン
4月ゴールド認定(シングル)
タイトル アーティスト名
プラチナ T.W.L/イエローパンジーストリート 関ジャニ∞
ゴールド MR.TAXI / Run Devil Run 少女時代
ゴールド Let me cry チャン・グンソク
ゴールド 縁を結いて 堂本 剛
ゴールド さよなら傷だらけの日々よ B'z


昨年に続いてAKB48とジャニーズ系がシングルCD市場を牽引している感じです。特にAKB48は5/25に発売されたAKB総選挙の投票券付きシングル「Everyday、カチューシャ」が初日の売上94万枚*3とミリオン確実の状況で昨年のように年間ランキング上位をかなり占めることになるかもしれません。

雑感

個人的にはシングルCDに関しては有料音楽配信の存在もあるため縮小傾向が続くものと思っていましたが、2010年に生産金額が前年比増となり2011年になってもその傾向が続いているというのは意外でした。このシングルCDの生産金額の増加を支えているのは現状だとやはりAKB48とジャニーズ系かなと。まあAKB48にしろジャニーズ系にしろいろいろ賛否があるCDの売り方をしているとは思いますが、CDという媒体が生き残る一つの方法なのかとも思います。今後これを参考にしたCDの売り方が増えてくるのかもしれません。
そして有料音楽配信についてですが2009年あたりから売上の伸びが止まってきてはいたのですが2011年に入ってガクッと落ちた感じです。まだ第1四半期の結果ではありますがこの状況が続くようだと有料音楽配信は利益率が比較的高いため*4レコード会社によっては利益面で影響が出てくる会社があるのではないかと思いました。

*1:年間ランキング特集『2010年、ヒットしたシングル、アルバム、DVDは?』-ORICON STYLE ミュージック

*2:アルバムはすべての月で数量、金額とも前年同月比減となっています。

*3:asahi.com(朝日新聞社):AKB投票権つきシングル、初日売り上げ最多の94万枚 - 文化

*4:エイベック・グループ・ホールディングスの2011年3月期 連結業績説明資料(PDF)を見ると音楽パッケージの売上高総利益率が約39%なのに対して音楽配信は約49%となっています。