「刑事罰適用1年 売り上げ回復せず」のニュースを見て思ったこと

痛いニュース(ノ∀`) : 違法ダウンロード刑事罰の適用から1年…CDやDVDなどの音楽ソフトの売り上げ回復せず - ライブドアブログ
刑事罰適用1年 売り上げ回復せず NHKニュース

「改正著作権法」は去年10月1日に施行され、インターネット上に投稿されている海賊版の音楽や映画などを違法なものと知りながらダウンロードした人に、刑事罰が適用されるようになりました。
警察が摘発した例はまだありませんが、コンピュータソフトウェア著作権協会によりますと、違法なファイルのやり取りに使われるファイル交換ソフトWinny」と「Share」を利用しているパソコンの台数がことしは去年より40%近く減るなど、法改正による一定の効果が見られます。
一方で、違法ダウンロードによって大きな損害が出ているCDやDVDなどの音楽ソフトの売り上げは、制度が変わった去年10月からことし6月まででは前の年の同じ時期より5%増えましたが、ことし1月から先月・8月までの最新のデータでは前の年より7%減少しています。
加えて音楽配信については、去年10月から6月までで前の年より24%の大幅な減少となっており、売り上げの回復には十分につながっていないことが分かりました。


違法ダウンロード刑事罰化などの対策によりファイル共有ソフトの利用者は減少しているものの、肝心の音楽ソフトの売上が回復していないという話で、この件についてネット上で様々な反応があります。さて、じゃあ当事者である日本レコード協会としてはどう考えているかというと、多分現在は音楽ソフトの売上減少がファイル共有ソフトなどによる違法ダウンロードが主な原因だと考えていないのではないかと思います。何故なら日本レコード協会が公開している2012年度「音楽メディアユーザー実態調査」の【無料聴取層の非購入理由】の項目を見ると、
一般社団法人 日本レコード協会|プレスリリース|2012年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表
2012年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(PDF)P32

「ファイルのダウンロードより視聴の方が影響大」と分析しているからです。実際【音楽を楽しむために利用したサービス】の項目を見ると、


2012年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(PDF)P26


全体の6割が音楽を楽しむために利用したサービスに「無料の動画配信サイト」と回答しており、特に中学生〜大学・専門学生は8割以上、20代社会人も7割以上と若い年代の利用率が非常に高い傾向にあります。現在はレコード会社もYoutubeニコニコ動画等に公式チャンネルを持っていてそこで音楽や動画を視聴できたり、ニコニコ動画原盤使用許諾楽曲のような楽曲もあるため、全てが違法にアップロードされた音楽ばかりというわけでは無いでしょうが、違法にアップロードされた音楽が圧倒的に多いというのもまた事実でしょう。
そのため、日本レコード協会としてもファイル共有ソフトの方は利用者が激減しておりある程度片がついたと考えて、今後は動画配信サイトの方の対策に本腰を入れて来るのではないかなと思います。ただ難しいなと思うのが単純に違法にアップロードされた音楽の削除や違法アップロード者の取り締まりなどの違法対策をしていけば良いのかという点。というのも【未知のアーティスト購入のきっかけ】の項目を見ると、
2012年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(PDF)P22〜P24




CD、音楽配信とも動画配信サイトがきっかけで購入したという割合がかなり大きくなっており、ある種の宣伝効果として無視できないレベルになってきています。もちろん宣伝効果より違法アップロードによる被害の影響の方が大きいと考えて違法対策をさらに強化していくという事もあり得るとは思いますが、そもそも売上に関しては上記の【無料聴取層の非購入層理由】や下記の【有料聴取層の購入減少理由】を見ても分かる通り、
2012年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(PDF)P31

金銭的な理由の面も大きいので、単純に違法対策を強化しても売上に対する効果はあまり見込めない可能性が高いと思われます。
個人的には違法対策自体はそれはそれで行っていくと同時に、楽曲の利用許諾などを利用して積極的に動画配信サイトから金銭的な見返りを得る方法を構築していく方が良いのではないかと考えていますが、当の日本レコード協会としては動画配信サイトに対して今後どういう対策を示すのかちょっと注目かなと思います。