ワタミが人手不足と労働環境改善のために60店閉鎖するという件について

ワタミ、人手不足解消へ60店閉鎖 居酒屋の1割:日本経済新聞

 ワタミは27日、運営する居酒屋の1割となる60店を2014年度中に閉店すると発表した。昨年設置した外部の弁護士などによる有識者委員会が店舗の労働環境の改善を指摘していた。今後は閉店した店舗の人員をほかの店舗に振り分けて慢性的な人手不足を解消させる。外食産業では景気回復で人手不足が深刻だが、人手不足解消を理由とした閉鎖は珍しい。

このニュースですが、元々ワタミは国内外食事業の主力である「和民」と「わたみん家」の店舗数を大幅に削減する事を計画していました。というのも、現在ワタミの国内外食事業はかなりの不振で、直近の決算である2013年度(平成26年3月期)第3四半期決算の国内外食事業は以下のような売上状況になっています。
ワタミ - IRライブラリー
平成26年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(PDF)

国内外食事業における売上高は529億5800万円(前年同期比95.3%)、セグメント損失は7600万円(前年同期は24億8000万円の利益)となりました。

このように第3四半期時点で赤字の状態となっています。ちなみに、2013年度当初の国内外食事業の売上予定だと、
ワタミ - IR情報
2013年度(第28期)上期決算を発表いたしました。決算説明会資料を掲載。(PDF)

国内外食事業 2013年度当初計画
売上高 733億円
営業利益 28億6000万円
経常利益 27億6000万円

これが、第2四半期決算で修正されて、

国内外食事業 2013年度修正計画
売上高 706億円
営業利益 1000万円
経常利益 2億1000万円

営業利益がほぼ0という厳しい修正をしています。
それで、こうなってしまった原因が客数減により既存店の売上の減少が大きかったのと、アルバイトの時給単価の上昇。時給については第2四半期の決算説明会動画によるとアルバイトの採用が難しくなっているため、採用単価が倍になり時給を上げざるを得ない状況になっているとの事です。
そのため、業績を回復するために第2四半期決算時点で590店舗ほどある「和民」と「わたみん家」を2年半かけて500店舗ほどまで減らすと第2四半期の決算説明会動画で述べています。なので、「労働環境の改善と人手不足解消のために60店舗閉鎖」という今回の発表は店舗を減らすためのよい理由付けとなっている気もします。

ワタミの介護事業と宅食事業の状況

上述のようにワタミの国内外食事業は厳しい状況に置かれているわけですが、ワタミの利益面での貢献が大きい介護事業、宅食事業も第2四半期決算で以下のように下方修正となっています。
2013年度(第28期)上期決算を発表いたしました。決算説明会資料を掲載。(PDF)

介護事業 2013年度当初計画 2013年度修正計画
売上高 365億円 358億円
営業利益 34億8000万円 32億5000万円
経常利益 28億4000万円 26億2000万円
宅食事業 2013年度当初計画 2013年度修正計画
売上高 544億円 456億円
営業利益 38億1000万円 26億8000万円
経常利益 38億2000万円 26億9000万円

海外の外食事業などは上方修正されているのですが、まだ事業としての規模も小さいこともありワタミグループ連結決算も下方修正となっています。

ワタミグループ連結 2013年度当初計画 2013年度修正計画 当初計画比
売上高 1750億円 1650億円 94.2%
営業利益 94億円 50億円 53.1%
経常利益 81億円 40億円 49.3%
当期利益 38億円 12億円 31.5%


介護事業は新規の入居者数と既存施設の入居率の低下。宅食事業は新規の営業拠点を増やしているものの1日あたり調理済商品食数がほとんど伸びていないことが要因のようです。国内外食事業も含めてこのような状態に陥っているのは競合他社と競争などいろいろあるのでしょうが、個人的には2013年7月の第23回参議院選挙においてワタミの創業者である渡邉美樹氏が立候補した際に、ワタミの問題点が大きく話題となり周知された事も少なからず影響しているのではないかと思っています。