仁川アジア大会のバスケットボールにおける帰化選手の出場資格問題について

韓国の仁川で9月19日から始まる第17回仁川アジア大会ですが、その実施競技の一つであるバスケットボールで帰化選手の出場資格について問題が起きているようです。


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台湾メディアによると、中華台北男子バスケットボールの帰化選手であるクインシー・デイビスの仁川アジア競技大会の出場資格問題で、中華台北バスケットボール協会の李一中秘書長は「昨日、韓国側から書簡が届き、デービスは台湾での居住期間が3年未満のため、9月19日に行われる試合には出場できないと書かれていた」と明かした。


帰化選手問題のフィリピンが大会ボイコットも検討、アジア大会の男子バスケ

仁川(インチョン)アジア大会の男子バスケットボールの4強候補と言われるフィリピンが、帰化選手問題で大会をボイコットする問題まで検討している模様だ。フィリピンの複数の地元メディアは9日、「アジア・オリンピック評議会(OCA)が出場資格を持たないとして米国からフィリピンに帰化したアンドレイ・ブラッチ選手(28・写真)のアジア大会への出場を認めなかったことを受け、バスケットボールのフィリピン代表が大会ボイコットも視野に入れた対応を検討している」と報じた。


それで、なぜ出場が認められなかったかというと、
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OCAの出場資格規定は、「帰化選手は帰化した国に3年以上居住しなかればならない」と定めている。

とのこと。
そんな規定があるのかと思い、JOC - 大会 アジア競技大会アジア・オリンピック評議会憲章(PDF)を確認してみると、「第50条 一国を代表するための要件」に以下のように定められているようです。

2. 次の条件に該当する選手は、参加資格がある。
a. 代表する国で生まれた者。
b. 代表する国の国籍または市民権を持ち、3年以上そこに継続して居住する者。
c. 代表する国に帰化し、そこに永住権を持っている者。

これなら帰化している選手であれば出場は問題無いのでは?と思ってしまうのですが、次の第3項にこう定められています。

3. アジア以外で生まれた選手は、上に記載された2.b及び2.cの条件に合致しない限り、参加資格がない。

つまり、アジアで生まれた選手なら2項にあるa〜cの条件のいずれかに該当していれば参加資格がある。しかし、アジア以外で生まれた選手はbとcの両方の条件を満たさないと参加資格が無い。問題になっている台湾のクインシー・デイビス選手とフィリピンのアンドレイ・ブラッチ選手は共にアメリカで生まれた選手なので、帰化はしていますから2項cの条件は満たしているものの2項bの3年以上の継続した居住実績が無いのなら、アジア・オリンピック評議会憲章の規定上参加資格が無いという事になり、この裁定をしたと考えられる仁川アジア大会組織委員会の判断は妥当かと思います。


とはいえ、台湾は、
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李氏によると、今年の5月にデービスの出場資格について問い合わせた際は「何の問題もない」との回答が来ていた。8月28日にも関連資料を提出して再確認が行われたが、今月1日に届いた回答も「出場資格に問題はない」だった。

2回も出場資格について確認して問題無いという回答を受けていたのにもかかわらず、いきなり出場資格は無いと言われたそうですからそれは納得出来ないでしょうし、フィリピンもボイコットの検討以外にもスポーツ仲裁裁判所への提訴も検討しているそうです。さらにFIBA国際バスケットボール連盟)にも助けを求めて、
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そのためフィリピンは国際バスケットボール連盟に助けを求め、連盟が仁川大会の組織委に対して「選手の参加資格を決めるのは連盟だ」と通告したが、組織委は「アジア大会はアジアの試合なので、アジア人が決め ることだ」と回答した。

という回答を受けているという情報もあるため、アジア大会開幕までに事態が二転三転する可能性もありそうです。


個人的には台湾の経緯を見る限り、仁川アジア大会組織委員会が出場資格の規定についてちゃんと理解していなかった事が、この問題を起こしてしまったのではないのかなと思っています。