水割りについての話
「水割り」は日本だけ? - Excite Bit コネタ(1/2)
お酒の席でよく見かける、ビールの次は“焼酎の水割り”とか“ウイスキーの水割り”と注文する光景。私にとってはなんの違和感もない注文の仕方である。しかしある時、中国出身の知人が「どうして日本人はお酒に水を入れるの?」と首を傾げたのである。
「どうして?」と言われ、あまりにも唐突な質問に少し戸惑ったが、おそらく焼酎やウイスキーはアルコール度数の高い酒類であるがゆえに、水で薄めて飲みやすくしてるんじゃないかしら? と意見してみた。彼は「それならアルコール度数の弱いお酒を飲めばいいのに」と。
確かにそうかもしれないが、この“水割り文化”は日本だけなのだろうか? ストレートやオンザロックにチェイサーをつけて飲んでいる外国人は多いが、ウイスキーでも水割りにして飲んでいる姿は見かけたことがないかもしれない。そこで外国人がよく訪れるお店のバーテンダーの方に聞いてみた。
「外国人で水割りを注文する方はあまりいませんが、コーラやソーダで割ったりはしていますよ。あとは、プロの間でもウイスキーは水割りにして利き酒することもあります。ストレートやオンザロックで飲むよりも少し水を足してやったほうが香りや味がひきたつと言われています。ただ、日本で水割りが一般的な飲み方になったのは、日本人はお酒に弱いから水を足して飲むようになったという説もあります」
この水割りに関する話ですが、厳密に言うとほとんどのウイスキーにしろ焼酎にしろまずそれ自体が「水割り」をしてあるお酒だということです
水割りと言える理由
その理由はウイスキーの製造過程において最後の工程である「瓶詰め」を見るとわかるのですが
土屋守著「モルトウイスキー大全」より
最後に瓶詰めのことも簡単に触れておく。熟成の完了したウイスキーの樽はいったんすべてタンクに集められ、ミックスされる。というのは倉庫内の置かれた位置、地面に近いところか天井付近か、壁際かそうでないかでそれぞれ樽の中のウイスキーの味が微妙に違ってくるからだ。もちろん樽そのものの個性によっても味が変わってくる。そのために、すべての樽をミックスして平均的な風味を保つ必要が生じてくる
さらにこのままではアルコール度数が高すぎる。熟成年にもよるが平均で50〜60度もあるため、水を加えて40度に落とし、その上で瓶詰めを行う。かつて輸出用は43度であったが、現在はEU規格の40度が一般的になっている
とあるように樽から出したものをそのまま瓶詰めしているわけでは無くアルコール度数を調整するために加水をしています*1。そしてこの加水をするというのは焼酎も同じです。だから厳密に言えば水割りをしてあるお酒と言えてしまうわけです
SMWSの話
さてここからはウイスキー、特にスコッチウイスキーの話になりますがスコッチウイスキー(以下スコッチ)の中にはこの加水をしないで販売しているものもあります。主に「カスク・ストレングス(Cask Strength)」*2と表記されているものがそれです。このカスク・ストレングスはスコッチの中でもモルトウイスキーで主に販売されていて、販売しているのは蒸留所自らが販売してる物(オフィシャルボトル)、瓶詰業者*3が販売してる物とあるのですが、変わり種としてザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(以下SMWS、日本のサイトはこちら)という協会が販売している物があります
このSMWSは元々はスコットランドのエディンバラで出来たウイスキー愛好家の団体で、「熟成されていたままのウイスキーを飲みたい!」という趣旨のもと設立されました。現在は広く一般の会員も募集しており全世界で3万人ほど会員がいるそうです。このSMWSが販売しているウイスキーは設立の趣旨の通り
1・樽同士のミックスをしない
2・加水をしない
3・冷却濾過(チル・フィルター)をしない
ということを守り本当に樽から出したままのウイスキーを瓶詰めしています。このSMWSについての話が古谷三敏氏が描いているマンガ「BARレモン・ハート」の12巻にあるのですがその中でSMWSのパンフレットのこんな一文を紹介しています
『分別あるものはウイスキーをストレートで飲む』これは無知無学 傲慢 自己満足によるものでありなんら客観性があるものではありません
お酒を飲む人の中には水割り(笑)なんて思っている人もいるかもしれませんが、決してそんなことは無いという事をSMWSのような団体が言っているのはなかなか面白い