コンサートプロモーターズ協会の2010年基礎調査報告書から見るライブの動向

一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)のサイトにて平成22年(2010年)の基礎調査データが公開されましたので、そのデータから2010年のライブ(コンサート)の動向を見てみようと思います。
※資料はhttp://www.acpc.or.jp/index.html年度別基礎調査報告書より。
※公演数や動員数(入場者数)などの各数字はライブエンタテイメント約款の第一条2項に、
ライブエンタテイメント約款

この約款において「入場者」とは、入場券を購入等(無償で招待券を入手した場合を含みます。以下同じ。)して公演に入場する者をいいます。この約款において入場者は、入場料を支払うことにより入場券を購入したものとみなされます。

とあるため、チケットを販売するような有料のライブが対象と思われます。

※調査対象期間は平成22年1月〜平成22年12月。
※2011年はコンサートプロモーズ協会の基礎調査報告書から見る2011年のライブの動向を見てください。

2010年の公演数、入場者数、総売上、著作権使用料

まず2010年の公演数、入場者数、総売上、著作権使用料などですが以下のような結果になっています。

2010年 2009年 前年比
公演数 18,112 17,391 +721
入場者(動員)数 2618万7096人 2605万9902人 +12万7194人
総売上 1280億3961万円 1255億400万円 +25億3561万円
著作権使用料 15億7600万円 15億3900万円 +3700万円
会員数 56 55 +1

公演数、入場者数、売上、著作権使用料と全て2009年より上回り集計を開始して以来過去最高の数字で順調そうに見えます。しかしグラフ化してみるとわかりやすいのですが、






公演数の伸びに比べると入場者数や総売上はそれほど伸びていません。実際、ひとつの公演数あたりの入場者数と売上を単純計算してみると2009年が入場者数1498人、売上721万円に対して2010年は入場者数1445人、売上706万円と僅かではありますが前年に比べマイナスとなっています。


ジャンル別の公演数、入場者数

次にジャンル別の公演数と入場者数を見てみるとこうなっています。
※パフォーミングアーツはバレエやミュージカルなどが対象となっています。

国内アーティスト
2010年公演数 2009年公演数 前年比
ロック・ポップス 13,552 13,077 +475
謡曲・演歌 354 394 −40
ジャズ・フュージョン 120 197 −77
クラシック 211 205 +6
パフォーミングアーツ 1,549 1,127 +422
その他 1.021 993 +28
合計 16,807 15,993 +814
2010年入場者数 2009年入場者数 前年比
ロック・ポップス 1834万6143人 2001万2516人 −166万6373人
謡曲・演歌 71万130人 71万333人 −203人
ジャズ・フュージョン 9万6134人 18万3359人 −8万7225人
クラシック 25万1229人 29万5668人 −4万4439人
パフォーミングアーツ 190万4771人 73万4143人 +117万628人
その他 153万2,842 75万2560人 +78万282人
合計 2284万1249人 2268万8579人 +15万2670人
海外アーティスト
2010年公演数 2009年公演数 前年比
ロック・ポップス 842 813 +29
謡曲・演歌 3 5 −2
ジャズ・フュージョン 29 29 ±0
クラシック 49 75 −26
パフォーミングアーツ 352 402 −50
その他 30 74 −44
合計 1,305 1,398 −93
2010年入場者数 2009年入場者数 前年比
ロック・ポップス 195万3886人 227万3392人 −31万9506人
謡曲・演歌 3408人 1万2332人 −8924人
ジャズ・フュージョン 4万6804人 3万4261人 +1万2543人
クラシック 7万4495人 12万5609人 −5万1114人
パフォーミングアーツ 100万8050人 75万7303人 +25万747人
その他 25万9204人 16万8426人 +9万778人
合計 334万5847人 337万1323人 −2万5476人


入場者数を見るとロック・ポップス、ジャズフュージョン、クラシックなど減少が大きく、逆にパーフォーミングアーツが大きく入場者を伸ばしています。正直なところ何故ここまでパフォーミングアーツが伸びているのかよくわかりませんが、ミュージカルの形式をライブで取り入れるアーティストが増えているのでしょうか。

感想

これまでだと公演数を増えせば入場者数や売上などもそれに比例して増加する傾向にあったのが、2010年はその傾向に乖離が見られるようになっています。これが一時的なものかどうなのかは2011年以降の動向を見てみないとわかりせんし、またあくまでこれらの数字はACPCに加盟している団体のみのものですからライブ全体がこのような傾向かもわからない所ですが、経済状況なども考えるとライブにもオーディオレコードのように逆風が吹きつつある可能性はあるのではないかと思います。
このようなライブの状況の中で注目されるのがニコファーレの試みでしょうか。ニコファーレの会場自体は客席数はスタンディングで380名、着席(シアター)で160名*1と大きくはないですが、ネットチケットを販売することができるためネットのユーザーも仮想客としても参加できる仕様になっています。そのため会場自体が小さくてもネットチケットにより多数の観客を集めることができ、かつ通常のライブだと基本的に会場近辺になりがちな観客の対象を全国に広げる事もできるなど、今までのライブとはまた違った形が生まれてくるのかもしれません。今後ニコファーレの試みが成功するにしろ失敗するにしろ、その動向は今後のライブの在り方に少なからず影響を与えるのではないかと思っています。

*1:可動式ステージを利用した場合はスタンディング280名、着席(シアター)120名。