マジコンの問題について

「マジコン」輸入販売の差し止め裁判、任天堂らが勝訴
この判決が出てからマジコンについていろいろ話題になっていますが、個人的なメモや想像も含めてつらつら書いてみます

今回の訴訟について

今回のマジコンの問題は著作権法で問題になったのではなく不正競争防止法で問題になったという点
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マジコンとは本来「バックアップツール」であり、自分が持っているソフトが壊れた時のために、バックアップで遊ぶためのもの、というのが表向きの存在理由だった。基本的に、自分で自分のソフトをコピーして遊ぶだけなら著作権上何ら問題はない。またコピーROMをインターネットにばらまいている人を著作権法で罰することはできるが、マジコン自体はあくまで「バックアップをとっているだけ」なので、マジコンの販売業者をこれで訴えることはできない、というわけだ。

 そこで今回持ち出されたのが「不正競争防止法」だ。「不正競争」にあたるケースはいろいろあるが、今回問題になったのは恐らく、「技術的制限手段を解除する製品等の販売」という部分だろう。任天堂が発表したリリースでも、「これらの機器により、インターネット上の違法アップロードサイト等から入手した本来ニンテンドーDS上では起動しないはずのゲーム・プログラムの複製物が、起動可能となるため、当該機器の輸入・販売等の行為により、当社およびソフトメーカー各社は極めて大きな損害を被っている」としており、ソフトのコピー行為ではなく、「本来起動しないはずのコピーソフトが起動できてしまう」点を論拠に持ってきていることが分かる。


DSマジコン訴訟で東京地裁が輸入・販売の差し止め命令 | スラド

 著作権侵害で差し止めと思ってる人がいるようですので……。

 リンク先の任天堂プレスリリースを読めばわかりますが、マジコン差し止め請求の根拠にしているのは「不正競争防止法」です。
 詳しくはITmedia記事 [itmedia.co.jp]にわかりやすく解説されてます。

 平たく言えば、マジコンが問題になったのでコピーガード対策を実施したところ、マジコン側がそれを回避するような処置を行ったため「明確に黒目的のコピーガード解除ツール」という認定を受けたわけですね。

 著作権侵害で訴える場合は侵害の実態はROMをコピーした側にあり、最終的には草の根でごそごそやってる各ユーザーをいたちごっこで取り締まる必要があり、対策が非常に困難です。
 しかし、マジコンを直接取り締まろうにも、あくまで道具でしかないので装置そのものが直接著作権法侵害とするのは難しい。

 なので、著作権侵害ではなくて、不正競争防止法の「技術的制限手段を解除する製品等の販売」として訴えたわけです。
 結局、任天堂にとってみればマジコン対策として導入されたコピーガードなんかを回避して遊べる機能を持っていることがまずいわけで、それに対してストレートに訴えを起こしていると言えるかと思います。

DS用マジコンについて

それで今回訴訟の対象になったマジコンは「R4 Revolution for DS」(以下R4)なわけですが、その前にDS用マジコン自体について


DS用マジコンはNDSスロット(slot1)に差すタイプとGBAスロット(slot2)に差すタイプがあるのですが現在出回っているのはほぼNDSスロットタイプです。それで本体にmicroSD等を差して使うタイプが多い(内蔵メモリのマジコンもいくつか存在する)。そしてゲームやアプリを動かすためにはカーネル(基本ソフト)が必要なのですが、ほとんどのマジコンは本体にカーネルが付属していることは無くそのマジコンの製作元のサイトからダウンロードする形式を取っています


で問題になったR4はNDSスロットタイプでカーネルをサイトからダウンロードして使用するマジコンですが、上記スラッシュドットのレスにはコピーガードを回避する処置をしたとあります。ですがR4のカーネルの更新は2008年4月24日で止まっていて*1それ以降に発売されたコピーガードをされているソフト(ドラクエ5等)を正常に動かすことはできません。ではどうやってコピーガードを回避するかというとR4のカーネルにはプロアクションリプレイ(PAR)互換のチート機能があり、そこに回避コードを入力することでコピーガードを回避するわけです。その回避コードはR4の製作元が公開しているわけではなく第三者であるユーザーが公開しています

なぜR4を訴えたのかという想像と今後してきそうな事

他の多くのマジコンはコピーガードをされているソフトもカーネルの更新で動かせるようにしているため、そういうマジコンを訴えたほうが訴訟も楽なはずなのに基本的にチート機能を使わないとコピーガードをされているソフトを動かせないR4を訴えたあたり「技術的制限手段を解除する製品等の販売」の技術的制限手段を解除するものにチート機能も含めることによってより規制を強固にしたい狙いもあったのかもしれない


ただそれでも「コピーガードをされているソフトをカーネルの更新等で動かせるようにしない」、「チート機能を実装しない」ようなマジコンがもし出てきた場合(マジコンは世界的に販売しているためわざわざ日本だけのためにそういう製品を出すとは思えませんが)は不正競争防止法では対処が難しくなるため、おそらく次の一手としてゲームに関しては私的複製対象外とするように働きかけてくるのではないかと*2


もっとも日本に関して言えば今回の判決だけでもそれなりに効果が出るとは思うのですが、おそらく日本以上にマジコンの市場が大きい海外を今後どうするか。これからがマジコン問題の本当の勝負なんだろうなあ

*1:ちなみにR4は現在生産されていないそうです。あと現在もR4と名の付くマジコンが出回っているがほとんどがスーパーコピー品か劣化コピー

*2:実際そういう働きかけをしているようなのですがソースが見つからないため後で追記するかも