2009年度上半期の総世帯視聴率(HUT)の下落について考えてみた

ネット上ではよくテレビ離れという言葉を見かけますが、実際にテレビ離れが進んでいるかどうかを見る指標の一つにHUT(総世帯視聴率)という数字があります。このHUTは
用語集(アルファベット順)|ビデオリサーチ

HUT
Households Using Television
総世帯視聴率。調査対象となる世帯全体で、どのくらいの世帯がテレビ放送を放送と同時に視聴していたのかという割合。

という数字で、テレビ全体の影響力を見ることができる数字でもあります。そのHUTの2009年度上半期(2009/3/30〜2009/3/27)の数字がTBSホールディングスの決算説明会資料に記載されています
株主IR情報 | TBSホールディングス
2010年3月期第2四半期決算資料配布資料(pdf)
※以下HUTの数字は関東のものです

GH(ゴールデン 19:00〜22:00) PT(プライム 19:00〜23:00) 全日(6:00〜24:00)
HUT 63.7% 62.5% 42.2%

これだけだとこのHUTが良いか悪いかわからないので、テレビ東京 - 会社・IR情報世帯視聴率の推移に97年度からのHUTが掲載されているので、抜き出して比較してみるとこうなります

年度ごとのHUT(08年度まで)
GH(19:00〜22:00) PT(19:00〜23:00) 全日(6:00〜24:00)
97年度 70.1% 68.7% 44.5%
98年度 70.5% 69.2% 45.3%
99年度 69.4% 68.4% 45.4%
00年度 68.6% 67.5% 44.8%
01年度 68.7% 67.7% 45.1%
02年度 68.0% 67.0% 44.7%
03年度 67.0% 66.2% 44.1%
04年度 68.3% 67.3% 44.9%
05年度 67.6% 66.8% 44.6%
06年度 65.8% 65.2% 43.3%
07年度 65.8% 64.5% 43.3%
08年度 66.0% 64.6% 43.4%
半期ごとのHUT
GH(19:00〜22:00) PT(19:00〜23:00) 全日(6:00〜24:00)
97年度上期 69.0% 67.7% 43.4%
97年度下期 71.2% 69.7% 45.5%
98年度上期 70.2% 68.9% 45.0%
98年度下期 70.7% 69.5% 45.7%
99年度上期 69.2% 68.1% 45.1%
99年度下期 69.7% 68.6% 45.6%
00年度上期 68.4% 67.3% 44.7%
00年度下期 68.8% 67.8% 44.9%
01年度上期 68.4% 67.6% 44.9%
01年度下期 69.0% 67.9% 45.3%
02年度上期 67.2% 66.4% 44.0%
02年度下期 68.8% 67.6% 45.4%
03年度上期 66.6% 65.9% 43.9%
03年度下期 67.3% 66.4% 44.3%
04年度上期 67.8% 66.9% 44.5%
04年度下期 68.8% 67.7% 45.2%
05年度上期 67.5% 66.7% 44.3%
05年度下期 67.7% 66.9% 44.8%
06年度上期 65.7% 65.2% 43.6%
06年度下期 66.0% 65.1% 43.0%
07年度上期 65.2% 64.1% 43.0%
07年度下期 66.4% 65.0% 43.6%
08年度上期 65.6% 64.3% 43.1%
08年度下期 66.3% 64.9% 43.7%
09年度上期 63.7% 62.5% 42.2%

09年度上半期のHUTはGH、PT、全日とも97年度以降過去最低の数字となっています。特にGHとPTのHUTはここ数年上昇傾向だったのが、09年度上半期になって急激に低下しています。

HUT急落の要因

では何故09年度上半期のHUTが急落したのかを、08年度第2四半期と09年度第2四半期の週ベースの平均視聴率から見てみます
※視聴率の数字は以下の資料より、08年度上半期は2008/3/31〜2008/9/28までの週ベース、09年度上半期は2009/3/30〜2009/9/27までの週ベースの視聴率を抜粋
株主IR情報 | TBSホールディングス
2009年3月期第2四半期決算説明会配布資料(pdf)
2010年3月期第2四半期決算資料配布資料(pdf)

GH(ゴールデン 19:00〜22:00)
09年度上半期 08年度上半期 増減
NHK 12.2% 13.6% −1.4%
日本テレビ 12.0% 12.0% ±0%
TBS 9.5% 11.1% −1.6%
フジテレビ 13.1% 13.2% −0.1%
テレビ朝日 10.9% 10.6% −0.3%
テレビ東京 7.1% 7.9% −0.8%
PT(プライム 19:00〜23:00)
09年度上半期 08年度上半期 増減
NHK 10.8% 12.1% −1.3%
日本テレビ 12.2% 12.0% −0.2%
TBS 9.7% 10.9% −1.2%
フジテレビ 13.0% 13.2% −0.2%
テレビ朝日 11.8% 11.5% +0.3%
テレビ東京 6.7% 7.5% −0.8%
全日(6:00〜24:00)
09年度上半期 08年度上半期 増減
NHK 6.8% 7.3% −0.5%
日本テレビ 8.2% 8.0% +0.2%
TBS 6.4% 7.3% −0.9%
フジテレビ 8.3% 8.4% −0.1%
テレビ朝日 7.8% 7.6% +0.2%
テレビ東京 3.2% 3.5% −0.3%

08年度上半期に比べ09年度上半期の視聴率はGH、PT、全日とも下落している局が多いですが、その中でもNHKとTBSの下落の大きさが目立ちます。そしてこれがHUTを急落させた要因でしょう。ただしNHKについては08年度上半期に北京オリンピックがあり、その影響で視聴率が高くなっているため*1そういう特殊な影響を抜きにすれば、TBSの視聴率の低迷がHUTの下落に大きな影響を与えているかなと


さてそのTBSの09年度上半期の視聴率の低迷についてですが
asahi.com(朝日新聞社):TBS、視聴率低迷で異例の7月改編 - テレビ・ラジオ - 映画・音楽・芸能
痛いニュース(ノ∀`):TBS、視聴率低迷…「ドラマ再放送枠」を新設、韓流ドラマで巻き返し狙う
などニュースにもなっていました。低迷の要因はいろいろあるかとは思いますが、個人的にTBSについてヤバいなと思うのは番組制作に金をかけてるわりに視聴率が取れていないところ。09年度の第2四半期決算から各局の番組制作費を見るとこうなります
2009年度第2四半期決算から見る在京民放キー局の番組制作費 - longlowの日記

2009年4−9月期 2008年4−9月期 前年同期比 伸び率
日本テレビ 471億82百万円 611億73百万円 −139億90百万円 −22.9%
TBS 535億85百万円 603億52百万円 −67億67百万円 −11.2%
フジテレビ 532億円 544億円 −12億円 −2.1%
テレビ朝日 388億15百万円 444億81百万円 −56億65百万円 −12.7%
テレビ東京 163億91百万円 217億28百万円 −53億37百万円 −24.6%

番組制作費にどういう費用が含まれるかは局によって違うようなのですが、TBSは番組制作費の縮小幅も他局に比べれば比較的小さく、番組制作費の金額も大きい。それでも視聴率が低迷しているというのは、根本的に番組制作のあり方を変えないとどうにもならないんじゃないかと思う

HUTの今後

HUTの下落を食い止めるには当然視聴率を上げないといけないわけですが、現在テレビ局はTBSやテレビ朝日のように放送事業で赤字だったり、他局も利益が大幅に減少するなどこの不況により余力があまり無い。そうなると番組制作費も上記のように削られるわけで視聴率を上げるために新しい試みをしたり、番組の質を上げたりすることが難しいのではないかと。おそらく今後もHUTの下落傾向は続いてしまうのではないかと個人的には思っています

*1:実際北京オリンピックが開催された08年08月のNHKの視聴率はGHで17.8%(2010年3月期第2四半期決算資料配布資料(pdf)より)と非常に高かった