アニメのビデオソフトの売上がどのように減少しているかをまとめてみた

深夜アニメ減少の打撃、苦悩の映像ソフト業界?アニメニュース Japanimate.com

日本を代表するコンテンツのアニメ産業といえどもDVD販売の苦戦に頭を抱えている。
「不況で財布の紐は固い。2〜3年前は萌え系、ロボット系ならどんな作品でも売れたが、今は選別されるようになった」(アニメ制作会社幹部)。
アニメ放映の5割以上(制作時間ベース)は深夜帯が占めているが、制作費は1話30分で1000万から1300万円。放送局から枠を買い取って放送し、収益の大半はDVD販売で回収する事業モデルだ。製作委員会を組んで制作費や枠代などを負担、出資比率に応じて収益を分配する方式が大半だ。

動画投稿サイトでの違法配信などの問題もあり、事業環境は悪化する一方。
深夜アニメはニッチな市場で、収益が期待出来ないとなれば、たとえヒットの可能性があっても出資者が集まらず、作品制作そのものが難しくなっている。
あるテレビ局幹部は「持ち込まれる企画は数年前の半分近くに減った」と渋い顔で語る。テレビ局にとって、視聴者の少ない深夜帯に制作費をかけずに収入を得られるアニメ番組は実入りの良い商売だ。深夜アニメのDVD販売減少はテレビ局をも苦境にさらすことになる。枠代を値下げするなどの対策を取った局もあるが、効果は不透明だ。

こういうニュースがありましたが、実際にアニメのDVD等の販売がどのように推移してきたのかを各種調査報告|社団法人日本映像ソフト協会にある年間売上統計より2001年からの動向を見てみようと思います

2001年からのアニメの売上金額と売上数量

この統計ではアニメのジャンルを「日本のアニメーション(一般向け)」「海外のアニメーション(一般向け)」「日本の子供向け(アニメーション)」海外の子供向け(アニメーション)」と分けており、それぞれジャンルごとの売上金額と売上数量を見てみます


※特に注記は無いようなのですが金額、数量とも販売用とレンタル店を足した数字と思われます
※「子供向け」の目安は10才以下を対象とした作品を指しています
※2007年よりビデオカセットの売上が調査対象外になり、2008年よりBDの売上が加算されています

売上金額
日本のアニメ(一般向け) 海外のアニメ(一般向け) 日本の子供向け(アニメ) 海外の子供向け(アニメ) アニメ合計
2001年 430億3700万円 80億6900万円 222億6700万円 20億9200万円 754億6500万円
2002年 745億3000万円 146億6000万円 160億4200万円 23億9300万円 1076億2500万円
2003年 664億2500万円 92億3600万円 160億7200万円 38億6400万円 955億9700万円
2004年 587億8500万円 172億1100万円 134億100万円 31億9300万円 925億9000万円
2005年 834億0500万円 111億5700万円 137億2200万円 18億7200万円 1101億5600万円
2006年 801億1600万円 72億7200万円 149億1200万円 11億9700万円 1034億9700万円
2007年 801億7600万円 55億1800万円 92億5400万円 15億5000万円 964億9800万円
2008年 703億8300万円 38億3700万円 75億2000万円 19億8100万円 837億2100万円
日本のアニメの売上金額
日本のアニメ(一般向け) 日本の子供向け(アニメ) 合計
2001年 430億3700万円 222億6700万円 653億400万円
2002年 745億3000万円 160億4200万円 905億7200万円
2003年 664億2500万円 160億7200万円 824億9700万円
2004年 587億8500万円 134億100万円 721億8600万円
2005年 834億500万円 137億2200万円 971億2700万円
2006年 801億1600万円 149億1200万円 950億2800万円
2007年 801億7600万円 92億5400万円 894億3000万円
2008年 703億8300万円 75億2000万円 779億300万円
アニメ全体の売上金額の動向

※単位は百万円

ジャンル毎の売上金額の動向

売上数量
日本のアニメ(一般向け) 海外のアニメ(一般向け) 日本の子供向け(アニメ) 海外の子供向け(アニメ) アニメ合計
2001年 9,313,338枚 2,203,195枚 6,717,928枚 1,019,548枚 19,254,009枚
2002年 17,243,046枚 3,740,465枚 2,013,019枚 1,320,997枚 24,317,527枚
2003年 13,389,524枚 2,852,661枚 4,152,457枚 3,776,444枚 24,171,086枚
2004年 12,658,023枚 7,298,981枚 3,913,846枚 2,523,206枚 26,394,056枚
2005年 18,430,346枚 4,742,196枚 4,393,859枚 1,790,840枚 29,357,241枚
2006年 17,918,005枚 2,965,878枚 3,903,544枚 1,802,296 26,589,723枚
2007年 17,668,466枚 2,136,334枚 3,122,334枚 1,742,985枚 24,670,119枚
2008年 16,757,885枚 1,471,531枚 2,535,36枚1 1,704,319枚 22,469,096枚
日本のアニメの売上数量
日本のアニメ(一般向け) 日本の子供向け(アニメ) 合計
2001年 9,313,338枚 6,717,928枚 16,031,266枚
2002年 17,243,046枚 2,013,019枚 19,256,065枚
2003年 13,389,524枚 4,152,457枚 17,541,981枚
2004年 12,658,023枚 3,913,846枚 16,571,869枚
2005年 18,430,346枚 4,393,859枚 22,824,205枚
2006年 17,918,005枚 3,903,544枚 21,821,549枚
2007年 17,668,466枚 3,122,334枚 20,790,800枚
2008年 16,757,885枚 2,535,361枚 19,293,246枚
アニメ全体の売上数量の動向

ジャンル毎の売上数量の動向

2001年からのテレビアニメの放映数とDVD、BDの発売タイトル数

もうひとつ、テレビアニメの放映数とアニメのDVD、BDの発売タイトル数も見てみます
※テレビアニメの放映数は日本のテレビアニメ作品一覧 (年代別) - Wikipedia、DVD、BDの発売タイトル数価格.comDVDソフト アニメ 発売日表より集計。それぞれwikipeiaと価格.comからの数字なので参考程度に
※テレビアニメの放映数は放送開始日を基準としてあります、また単発や特別番組(例:金曜ロードショールパン三世)なども含まれています
※発売タイトル数には海外アニメや子供向けアニメ、クレイアニメ等も含まれおり、またDVDBOXや再販、廉価商品等も含まれています
※発売タイトル数はDVD・BDのみでビデオカセット等は含まれていません

年度 発売タイトル数 年度 テレビアニメの放映数
2001年 1401 2001年 87
2002年 1894 2002年 91
2003年 1988 2003年 99
2004年 2273 2004年 124
2005年 2488 2005年 114
2006年 2876 2006年 172
2007年 2919 2007年 151
2008年 2605 2008年 141
2009年 2730 2009年 133

売上金額、売上数量、放映数、タイトル数の比較

これらを合わせてみてみるとこんな感じになります

アニメ全体の売上金額 アニメ全体の売上数量 テレビアニメの放映数 発売タイトル数
2001年 754億6500万円 19,254,009枚 87 1401
2002年 1076億2500万円 24,317,527枚 91 1894
2003年 955億9700万円 24,171,086枚 99 1988
2004年 925億9000万円 26,394,056枚 124 2273
2005年 1101億5600万円 29,357,241枚 114 2488
2006年 1034億9700万円 26,589,723枚 172 2876
2007年 964億9800万円 24,670,119枚 151 2919
2008年 837億2100万円 22,469,096枚 141 2605
2009年 * * 133 2730


これだけで見ると2002年に一度ピークがあり、その後売上が減少していたが2005年に急回復。そこで一気に作品を投入したがDVDの売上は伸びずにバブルが崩壊、そして今に至るという感じがしてしまいますが。それでも2006年にテレビアニメの放映数がここまで急激に増えたのは何故なんだろうとは思います
また2009年はまだ売上金額、売上数量のデータが公表されていませんが、上半期の状況*1を見るかぎりDVDの売上減少は続いているものの、BDの売上が急拡大しており日本のアニメーション(一般向け)などは2008年より多少良くなるのではないかと予想しています

個人的な雑感

さて上記の記事で、

動画投稿サイトでの違法配信などの問題もあり、事業環境は悪化する一方。

と書いてありますが一部の動画共有サイトを除けば多くの動画共有サイトではアニメ本編などをアップロードすればすぐに削除されますし、2008年からはファイル共有のほうでも放映中のアニメをアップロードした人を逮捕するなど取り締まりを強めており、以前よりも違法配信の問題は確実に少なくなっていると思う。しかし売上は良くなっていない。もっとも売上の減少はテレビアニメの放映数の減少、それによるDVD等の発売タイトル数の減少による影響が大きいのでしょうが、そうなっている要因の一つがテレビアニメの放映が大都市圏にあまりにも集中しすぎていることなのではないと
人口や経済力から考えれば大都市圏に放映を集中させたほうがいろいろと効率が良いのはわかるのですがその集中の度合いが過ぎているため、結果テレビアニメが集中する大都市圏ではその放映数もDVDなどのソフトの供給も消化しきれなくなっているのではないかと思います。かといって、CSがあるとはいえ実質切り捨てられたような状況が久しく続いている地方の放映数を増えやしてもすぐにアニメのソフトの需要が増えるとも思えない
おそらく数年はBDの需要拡大で多少は持ち直す気もしますが、ここで何かしらの手を打っておかないとBDの需要が一段落した時に今以上に酷い状況になる可能性もあるんじゃないかと思う