細川護煕元首相の「東北でもオリンピック」についてオリンピック憲章から考えてみました

猪瀬直樹氏の辞職に伴う東京都都知事選挙に立候補を表明している細川護煕元首相がこんな選挙公約を語ったそうです。


細川氏 東北でもオリンピック:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京

来月の東京都知事選に出馬する意向を固めた細川元総理大臣が、選挙公約で、東京オリンピックについて、東北地方も含めた開催を掲げることがテレビ東京の取材で分かりました。選挙公約で、細川氏は、2020年の東京オリンピックパラリンピックについて、東日本大震災の被災地の東北地方も含めて開催することを掲げます。

「東北地方を含めた開催を掲げる」というのは、おそらく現時点で宮城スタジアムで開催が決まっているサッカー(予選)以外にオリンピック・パラリンピックの競技・種別・種目の一部を東北の都市で開催するという事かと思いますが、では今からそういう変更をする事は可能なのか?という事をオリンピックに関する規約である「オリンピック憲章」から考えてみます。

オリンピック憲章における「開催地、場所、会場」の規定

まずオリンピック憲章ではオリンピックの「開催地、場所、会場」について以下のように規定しています。
JOC - オリンピズム | オリンピック憲章オリンピック憲章 Olympic Charter2011年版・日本語(PDF)より。

・34条1項
全ての競技はオリンピック競技大会の開催都市で行わなければならない。ただし、IOC 理事会が国内の他の都市もしくは他の場所や会場で一部の種目を開催することを承認した場合
は、その限りではない。開会式および閉会式は開催都市で行わなければならない。全ての競技およびその他のいかなるイベントの開催地、場所、会場も、全て IOC 理事会の承認を得な
ければならない。

34条の規定によると、原則としてオリンピックの競技は開催都市で行わないといけないがIOCの理事会が承認さえすれば一部の種目を他の都市で開催する事も可能となっています。しかし、この34条には付属細則があり、

・34条付属細則1項
開催都市以外の都市や場所で、ある種目、種別、または競技をおこなうための要求は、IOCに対し、遅くとも評価委員会の候補都市訪問より前に、書面により提出しなければならない。

つまり、IOCの理事会が承認すれば一部の種目を開催都市以外で開催する事は可能だが、そうするためには評価委員の候補都市訪問より前に、書面により提出していなければならない」という事になります。
現段階はすでに東京でのオリンピックの開催が決定している状態であり、東京オリンピックの招致委員会も宮城スタジアムでのサッカー(予選)以外に東北の都市で一部種目を開催するための書面をIOCに提出している訳も無いでしょうから、オリンピック憲章の規約上は今からサッカー(予選)以外の種目を東北の都市で開催するというのは不可ということになるかと思います。


まあ、最終手段としてオリンピックの開催地、場所、会場についての規約を修正してしまうという事も考えられますが、オリンピック憲章の規約修正は基本的に年1回行われるIOC総会*1において、

・18条3項
総会の定足数は、IOC の委員総数の半数に 1 を加えたものとする。総会の決議は、投票総数の過半数によって採択される。但しオリンピズムの根本原則あるいはオリンピック憲章の規則の修正について、またはオリンピック憲章中、他に特記のある場合については、投票総数の3分の2の多数決を必要とする。

とあるように投票総数の2/3以上の多数決が必要ということでハードルが高くこの方法も難しいかと思います。


このようにオリンピック憲章から考える限りでは「東北でもオリンピック」という公約の達成は相当厳しいと思われますが、細川護煕元首相はこの公約達成のためにどのような考えを持っているのか、今後の発言に注目かなと個人的に思っています。

*1:会長権限、もしくは3分の1以上のIOC委員からの書面要求があれば臨時総会が開かれる事もあります。