2020東京オリンピック招致の問題点と現時点の評価

久米宏が語る『東京オリンピック招致の最大のネックを誰も言わない不思議』 | 後世に残したいラジオの話
オープニングトークの軽い話のようですがあまりメディアで報道されない東京オリンピック招致の問題点について久米宏氏が語っています。その問題点について少し考えてみました。

久米宏氏が語った2020東京オリンピック招致の2つの問題点

久米宏氏はラジオで主に2点ほど問題点を指摘しています。


1・2018年の冬季オリンピックが韓国の平昌であり、2020年の東京が夏季オリンピック開催地となった場合、アジアで冬季、夏季と連続してオリンピックが続いてしまう事。

久米 そうすると日本は2020年の夏季オリンピックに東京が立候補しているんですけど、そうするとどういう事になるかって言うと、2018年が韓国で冬季オリンピック、2020年が東京で夏季オリンピックということになると・・


久米 冬季夏季が続いてアジアなんです。


久米 これが最大のネックだってことを何で言わないのかって僕、不思議なんですよねぇー。

2・オリンピックに最も放映権料を支払っているアメリカの生中継の問題。

久米 だからそれ以外あまり同じエリアで、続けてやったことがなくて。特にオリンピックの場合はアメリカが一番問題にするのはね、生中継が出来るか出来ないかって事なんですよ


久米 つまり生中継できる時間帯にオリンピックを開催してくれるかどうかってのは、アメリカの放送局ってのはイッパイ金を出すもんですから非常に気にするんですけど、アメリカのネットワークがね。でご存知のように2018年が平昌なんですけど、その前の2016年、夏季オリンピック、2020年の前、これどこでやるか知っています?


堀井 どこですか?


久米 だからロンドンの次ですよ。・・・それも知らないの? フフフ、君ほとんど何も知らないの?みのもんたと何の仕事してんの? 2016年はリオデジャネイロです。


久米 つまり、ほとんど経度が変わりませんから。っていうことは時差がほとんどないから、全ての競技は生中継してアメリカで楽しめるんです。でヨーロッパでも南米だとそれほど時差がないんですけど、これ平昌・東京っていう風に冬季夏季のオリンピックを続けてやると、アメリカにとっては最悪の時間なんですよ。


久米 つまり、そんなことが許されるかどうかってことですよ。


堀井 うん


久米 冬を韓国でやり夏を日本でやる。オリンピックをね、立て続けに。アジアで。


久米 これは、アメリカのネットワークが許さない。ヨーロッパのテレビ局も『それは無いんじゃないの?』って言うっていうのが最大のネックなんですけども、それを言わないんですよ。

まず1の問題についてですが、http://d.hatena.ne.jp/kotobaproject/20130323/1364047341の記事にある「2年以内、同一地区で開催された夏季・冬季五輪」一覧を見て分かる通り、夏季、冬季を同一の地域で連続して開催されたケースはヨーロッパでは結構あって、戦後でも5例ほどあります。ただそれ以外の地域では戦前の北米で1例あったのみなので確かに懸念事項の一つではあるとは思います。しかし、冬季五輪は実施競技の性質上ある程度の降雪量が必要であり、しかもオリンピックを開催できるだけの経済力・都市基盤を持つ都市というのがどうしても限られるため、夏季-夏季、冬季-冬季で連続して同一地域開催するほどには問題視しないのではないかとも思います。
そして2についてですが、IOCの収入の約半分がテレビなどからの放送権料収入が占めていて*1、さらにその放送権料収入の半分がアメリカ*2からの収入。そして2番目がEBU(ヨーロッパ)*3なため、アジアで連続開催となると時差の関係上アメリカ、ヨーロッパのテレビ局としてはあまり好ましくないと考えてはいることは間違いないでしょう。
ただし、2020年の夏季オリンピック放映権料についてはアメリカ*4、イギリス*5、ドイツ、フランス、韓国*6などの国では、すでに放映権料の支払額について妥結しているため、IOCとしてはどの国が2020年の開催地になったとしても、放映権料の収入が極端に減少するといった事は心配していないと思います。


日本に有利になりそうな点

久米宏氏の話では東京の誘致に不利になりそうな点を話していますが、逆に東京に有利になりそう点もあります。それは2020年の次のオリンピックである2024年の夏季オリンピックの開催地にフランスのパリが立候補予定になっている事です。パリは近代オリンピックの父であるクーベルタン男爵の生誕地であり、また2024年は1924年にパリでオリンピックが開催されてからちょうど100周年という記念すべき年でもある事から2024年の開催地に現時点でもかなり本命視されていると言われています。しかし、もし2020年にヨーロッパで夏季オリンピックが開催されてしまうとヨーロッパで連続して夏季オリンピックを開催ということになってしまい、招致のマイナス要因になってしまいます。そのためパリとしてはできれば2020年はヨーロッパでオリンピックを開催してほしくないのではないかと。なのでスペインのマドリードもそうですが、トルコのイスタンブールもヨーロッパの扱い*7になるため、フランスのIOC委員とパリでの2024年夏季オリンピックの開催に賛同するIOC委員は東京に投票する可能性が高くなるのではないかと思います。


現時点での評価

ちなみに、現時点で2020年夏季オリンピックの招致国の評価がどうなっているかというと、IOCの1次選考の評価は2020年夏季オリンピックの開催地選考 - Wikipediaを見ていただくとして、他にもオリンピック招致に関する専門のサイトが海外にはあって、その中でGamesBids.comAround the Ringsでは独自の開催地予測数値を出しており、最新の数字は以下のようになっています。

GamesBids.com

GamesBids.com - BidIndex: Istanbul Maintains Narrow Lead in 2020 Olympic Bid Index
※2013年2月時点。BidIndexの数字が大きいほど評価は高い。

BidIndex 前回比(2012年5月比)
イスタンブール 61.78 +1.58
東京 61.07 +1.15
マドリード 57.29 +2.19
Around the Rings

Tokyo 2020 Builds Lead for Summer Olympics
※2013年1月時点。POWER INDEXの数字が大きいほど評価は高い。

POWER INDEX
東京 77
イスタンブール 73
マドリード 73


また、2020年夏季オリンピックの開催地はブックメーカーの賭け対象にもなっていて現時点でのオッズはこうなっています。
2020 Olympics Who Will Host Betting Odds | Olympics Betting | Oddschecker
※配当率はブックメーカー方式 - Wikipediaである点に注意して下さい。

東京 1.6〜1.75倍
イスタンブール 2.9〜3.3倍
マドリード 4.0倍〜10.0倍

2020夏季オリンピックの開催地が決定するのは2013年9月7日ですので、これからが招致レースの佳境を迎えます。とはいえ今回の開催候補地の国はスペインは財政問題。日本は津波地震などの自然災害と原発事故に端を発した電力問題。それと中国、韓国との領土問題。トルコはインフラの未整備と隣国であるシリア内戦の長期化とイランの問題と、何かと大きい問題点が多くIOCの委員は投票先にかなり悩みそうな気がします。そうなるとちょっとしたことが投票に影響する可能性が高くなりそうで、特にシリアの内戦が9月までにどういう展開になるかが開催地の決定に大きく影響するのではないかと個人的には考えています。