2008年の世界の音楽産業動向

8/12に公開された日本レコード協会の機関誌THE RECORD 2009年8月号(pdf)にて2008年世界の音楽産業と題した特集が組まれているので、日本を含め2008年の世界の音楽産業の動向がどうだったのか見てみようと思います。
※最新の売上は【2017年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上動向を見てください。
※2009〜2016年の動向は以下を見てください

2009年の世界の音楽産業動向
2010年の世界の音楽産業動向
2011年の世界の音楽産業動向
【2012年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上状況
【2013年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上状況
【2014年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上状況
【2015年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上状況
【2016年】世界の音楽の売上高上位20ヶ国の売上動向

※各数字は後に訂正される可能性があります。

世界の音楽の売上

まずは世界の音楽売上高から

メディア別売上金額(レコード会社収入ベース)
2007年 2008年 前年比
パッケージ 163億50百万ドル 138億29百万ドル −15%
音楽配信 30億50百万ドル 37億84百万ドル +24%
権利収入 6億90百万ドル 8億02百万ドル +16%
合計 200億91百万ドル 184億15百万ドル −8%

※小売りベースでの世界の音楽市場は推定で278億ドルとされています
音楽配信の売上は伸びているものの、パッケージの売上の落ち込みが大きく前年より15%のマイナスとなっています。また2004年からの世界の音楽売上高及びメディアの別の売上高はこうなっています

2008年総売上上位20ヶ国の状況

次に売上高上位20ヶ国の状況を見ていきます

総売上上位20ヶ国の中で前年より売上がプラスになったのは2位日本(+0.9%)、11位ブラジル(+8.1%)、18位韓国(+16.0%)、19位インド(+6.3%)の4ヶ国のみ。他は全てマイナスという結果になっています。ちなみに日本に関するデータはネット音楽配信はCDの売上減少を支えきれたのか!? 音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる:Garbagenews.comにて詳しく取り上げられているのでぜひ見てみて下さい


ついでに上記の表を「パッケージ」、「音楽配信」、「権利収入」とそれぞれに分けて金額順に並べ替えてみました

パッケージ 金額 音楽配信 金額 権利収入 金額
1 日本 32億15百万ドル 1 アメリ 17億83百万ドル 1 イギリス 1億34百万ドル
2 アメリ 31億39百万ドル 2 日本 8億21百万ドル 2 ドイツ 88百万ドル
3 イギリス 14億59百万ドル 3 イギリス 2億52百万ドル 3 フランス 86百万ドル
4 ドイツ 14億16百万ドル 4 フランス 1億60百万ドル 4 日本 73百万ドル
5 フランス 8億04百万ドル 5 ドイツ 1億23百万ドル 5 アメリ 55百万ドル
6 カナダ 3億59百万ドル 6 韓国 84百万ドル 6 オランダ 49百万ドル
7 オーストラリア 3億25百万ドル 7 カナダ 77百万ドル 7 スペイン 36百万ドル
8 イタリア 2億68百万ドル 8 オーストラリア 51百万ドル 8 イタリア 29百万ドル
9 スペイン 2億37百万ドル 9 ブラジル 30百万ドル 9 ベルギー 26百万ドル
10 ロシア 2億09百万ドル 10 イタリア 29百万ドル 10 インド 21百万ドル
11 オランダ 2億08百万ドル 10 スペイン 29百万ドル 11 カナダ 20百万ドル
12 ブラジル 1億79百万ドル 10 インド 29百万ドル 12 デンマーク 15百万ドル
13 スイス 1億73百万ドル 13 ベルギー 20百万ドル 13 オーストラリア 13百万ドル
14 ベルギー 1億46百万ドル 14 デンマーク 19百万ドル 13 ブラジル 13百万ドル
15 メキシコ 1億30百万ドル 15 メキシコ 16百万ドル 13 オーストリア 13百万ドル
16 オーストリア 1億24百万ドル 16 オランダ 15百万ドル 16 スウェーデン 12百万ドル
17 スウェーデン 1億20百万ドル 17 スイス 13百万ドル 17 スイス 6百万ドル
18 インド 90百万ドル 18 スウェーデン 11百万ドル 18 ロシア 4百万ドル
18 デンマーク 90百万ドル 19 オーストリア 10百万ドル 20 メキシコ 0ドル
20 韓国 56百万ドル 20 ロシア 8百万ドル 20 韓国 0ドル

こう見るとパッケージの売上は日本がアメリカを上回って世界一なんですね。その代わり音楽配信の売上ではアメリカに2倍以上差をつけられている。また主要な国のメディア別の売上はこうなっています



中国や韓国などは音楽配信の売上がパッケージの売上を上回っている。アメリカも音楽配信が総売上の4割に迫る勢いで近いうちにパッケージの売上げに並ぶ可能性は高いと思う。他の国は音楽配信の売上が伸びている国が多いとは思いますが、まだまだパッケージが音楽の売上の多くを占めていて、音楽配信の普及がこれからといった感じの国も多いです

世界の音楽配信の状況

さらに売上高を伸ばし続けている音楽配信の状況を見てみます。まずは世界の音楽配信の売上ですが上記にもあるとおり前年比24%増の37億84百万ドル。そのメディア別の割合はこうなっています

インターネットとモバイルがかなり拮抗した形で売上のほとんど占めています。そして上位10ヶ国のフォーマット別の割合を見ると国ごとにいろいろ特徴が出ていてなかなか興味深い



まず日本のモバイルへの極端な偏りが目立つ。その日本のモバイルの特徴としてシングルトラックの売上が非常に大きい。日本同様にモバイルの占める割合が大きいスペインだと着うたに代表される「Ringtunes」が大きな割合を占めていることを見ると、日本はモバイルで音楽を聴くことがかなり定着している表れかなと。また日本だとまだあまり目立たない「subscription」ようはナップスターやRealMusicなどの定額制の音楽配信サービスですが、いくつかの国では一定のシェアがありフランスのように20%近いシェアを持っている国もあるなど、今までのインターネットやモバイルなどとは違った音楽配信サービスが台頭してきている国もあります

CDの売上が落ちた要因は?

音楽CD大悲鳴、もう音楽CDがもうさっぱり売れん…先生きのこるには…:アルファルファモザイク
という記事が話題になっていましたが世界的な傾向を見てもパッケージ(主にCD)の売上が落ち込んでいます。その要因をこの特集ではこう述べています

・違法ダウンロードのまん延が特に若い消費者の購買習慣に影響を与え、CDの販売に打撃を与えた。
・店舗において、パッケージ販売用のスペース縮小等が、消費者がCDを購入できる機会の減少をもたらした。
・厳しい経済状況により、2008年中に多くの店舗が閉店した。
・他の娯楽商品との競争が激化した。
・特に若年層において、音楽配信の購買に移行する消費者が増えた。
・経済環境の悪化が、特にクリスマスシーズンの売上に影響を及ぼした。
・音楽のユビキタス性がますます高まり、CDパッケージを購入せずにデジタルで購入し消費するようになった。
・多くの市場で海賊版の存在が市場に悪影響を及ぼし続けた。

景気の悪化などそうだろうなあと思われる理由もありますが、違法ダウンロードが蔓延したからCDの販売に打撃を与えたというのは・・・違法ダウンロードによる影響が大きいのはCDより音楽配信のほうだと思うのですがそのあたりどうなんだろう。また外部の要因ばかり指摘していますが、レコード会社やミュージシャンなど内部の要因もあるんじゃないかなと

ちょっと思ったこと

あくまで個人的に思ったことなのですが、なんというか音楽の違法配信やファイル共有などを積極的に取り締まっている国ほど音楽の売上が落ちているような・・・