CD等による音楽鑑賞の行動者率と若者のCD、音楽離れについて
今年は久しぶりにCDの売上が前年を上回りそうな状況*1ですが、実際にCDなどを聞く人の割合や時間の方はどうなっているのかを社会生活基本調査などから見てみました。
社会生活基本調査から見るレコード・テープ・CD等による音楽鑑賞の行動者率と行動日数
資料は以下の社会生活基本調査より抜粋。
・1996年(平成8年)>平成8年社会生活基本調査 > 生活行動に関する結果 > 主要統計表 の男女,年齢,社会的活動の種類別行動者率(xls)より。
・2005年(平成18年)>平成18年社会生活基本調査 > 調査票Aに基づく結果 > 生活行動に関する結果 > 生活行動編(全国) > 趣味・娯楽の男女,趣味・娯楽の種類,頻度別行動者数,平均行動日数及び行動者率(xls)より。
・2011年(平成23年)>平成23年社会生活基本調査 > 調査票Aに基づく結果 > 生活行動に関する結果 > 生活行動編(全国) > 趣味・娯楽の男女,趣味・娯楽の種類,頻度別行動者数,平均行動日数及び行動者率(xls)より。
・2001年(平成13年)は社会生活基本調査に「レコード・テープ・CD等による音楽鑑賞」に関する調査項目がないため除外。
行動者率と行動日数
※行動者数:過去1年間に該当する種類の活動を行った人の数
※行動者率:行動者数÷属性別人口×100%
※平均行動日数:行動者について平均した過去1年間の行動日数。
行動者率 | 平均行動日数(日/年) | |
---|---|---|
1996年(平成8年) | 51.9% | 131.9日 |
2005年(平成18年) | 52.4% | 135.4日 |
2011年(平成23年) | 47.5% | 135.7日 |
年齢別の行動者率の推移
※1996年(平成8年)は70〜74歳と75歳以上という区分では無く「70歳以上」となっているため、参考として見てください。
年齢(5歳ごと) | 1996年(平成8年) | 2005年(平成18年) | 2011年(平成23年) |
---|---|---|---|
10〜14歳 | 72.3% | 63.6% | 59.8% |
15〜19歳 | 86.8% | 81.0% | 70.6% |
20〜24歳 | 85.5% | 81.1% | 69.8% |
25〜29歳 | 81.1% | 77.6% | 66.4% |
30〜34歳 | 75.5% | 73.4% | 64.9% |
35〜39歳 | 68.4% | 70.8% | 62.9% |
40〜44歳 | 56.2% | 68.7% | 62.1% |
45〜49歳 | 43.1% | 62.0% | 59.5% |
50〜54歳 | 34.0% | 49.3% | 51.8% |
55〜59歳 | 27.3% | 37.4% | 40.0% |
60〜64歳 | 22.6% | 30.3% | 31.4% |
65〜69歳 | 16.4% | 25.1% | 25.5% |
70〜74歳 | (8.4%) | 19.0% | 20.8% |
75歳以上 | (8.4%) | 10.8% | 12.5% |
国民生活時間調査から見るCD、テープの行為者率と時間量
似たような調査をNHK放送文化研究所も行なっており、こちらはCD、テープ(デジタルオーディを含む)の平日、土曜、日曜の行為者率と時間量を調査しています。
※生活時間調査 | NHK放送文化研究所の2010年 国民生活時間調査報告書(PDF)より。
若者のCD離れと音楽離れは起きている?
社会生活基本調査と国民生活時間調査の双方を見ると、全体としてはCDなどによる音楽鑑賞の行動者率は若干減少傾向にあるかなという感じですが、年代別でみると40代以下は行動者者率が減少傾向なのに対して50代以上は逆に増加傾向にあるなど2極化してきており、特に10代〜20代の行動者率と時間量の減少は比較的大きく、いわゆる「若者のCD離れ」が起きている可能性は高いと思います。しかし、それが「音楽離れ」とイコールかというとさにあらずで、現在なら違法、合法を含めネット上でいくらでも様々な音楽を聞くことはできるため、そちらに流れている。。。と言いたいとこなのですが、これについてもちょっと気になる調査結果があります。
一般社団法人 日本レコード協会|調査・レポート|音楽メディアユーザー実態調査 2011年度
2011年度音楽メディアユーザー実態調査報告書(PDF)より。
音楽を楽しむために利用したサービスの「Q・この半年間(3月〜8月)に、音楽を楽しむために利用した商品やサービスは何ですか。」
2011年度 | 2010年度 | |
---|---|---|
Youtube | 52.0% | 56.7% |
FMラジオ | 32.7% | 37.8% |
テレビ(BS放送含む) | 30.8% | 40.8% |
カラオケBOX | 30.3% | 37.8% |
ニコニコ動画 | 19.7% | 23.6% |
AMラジオ | 16.6% | 18.8% |
コンサート・ライブなど生演奏 | 15.5% | 18.9% |
インターネットラジオ(Radiko・iTunesラジオ等を含む) | 10.9% | 4.8% |
DVD・Blu-rayDisc | 10.2% | 16.4% |
インターネット無料音楽配信・ストリーミングサービス | 9.3% | 17.8% |
YouTube、ニコニコ動画以外のインターネット無料動画配信サイト | 6.8% | 10.0% |
テレビの有料音楽チャンネル | 4.0% | 4.8% |
飲食店・喫茶店のカラオケ (カラオケ教室を含む) | 4.0% | 8.0% |
インターネット有料音楽配信・ストリーミングサービス | 3.1% | 2.6% |
家庭用カラオケ | 1.4% | 1.9% |
ビデオカセット(VHS)ソフト | 1.1% | 2.1% |
インターネットの有料動画配信サービス | 1.0% | 1.6% |
有料の音楽ラジオ | 0.5% | 1.4% |
あてはまるものはない | 17.4% | 8.0% |
この調査は対象年齢が全年齢(12歳〜69歳)で特に10代〜20代の若者を対象にしているわけでもなく、かつ注意書きに「※ベースの条件が異なり、選択肢の追加、集約等があるため、単純比較は困難」とあるのですが、ほとんどの音楽を楽しむために利用したサービスの利用率が前年度より下回っており、10代〜20代の利用が多そうなYoutubeやニコニコ動画も前年度より減少しています。まあ、違法ダウンロードに流れている事も考えられますが、ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)の「ファイル共有ソフト利用実態調査」ではP2Pに関してだと、
第10回「ファイル共有ソフト利用実態調査」 | 調査報告書 | 活動報告 | ACCS
「現在利用者」は一般消費者4.7%、中学生・高校生7.7%となり、昨年度(2010年)一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が実施した同種調査の結果(一般消費者、中学生・高校生とも5.8%)に比べると、一般消費者は減少したものの、中学生・高校生の利用が増加に転じました。
中高生は若干増加しているものの全体としては減少しています。それともう一つの大きな違法ダウンロード先であるオンラインストレージについては第10回のアンケート調査では対象外になっているのですが、2012年の初めにFBIによりMegauploadが閉鎖した事をきっかけに、日本向けのファイルに強いオンラインストレージは軒並みファイルの共有停止や大規模な削除を行っていて、残ったオンラインストレージもフリー(無料)でのダウンロードをかなり制限したり、プレミアム(有料)も一般的な支払い方法だったpaypalが使えなくなったところが多くなるなどしているため、全体として若者の違法ダウンロードの利用者がそう極端に増えているとは考えにくいかなと思っています。
個人的には若者のCD離れだけならそれほど問題では無いと思っています。しかし、もし音楽を聞くこと自体から離れてきているとしたらこれはかなりマズイかと。現在、日本レコード協会を始め権利者側の人たちは違法ダウンロード対策に力を入れているようです。それはそれで大切でしょうが同じくらい音楽の普及やユーザーの育成という事に力を入れていかないと、今後の音楽の売上に影響を及ぼす可能性があるのではないかと考えています。